映画『バティモン5 望まれざる者』ラジ・リ監督が新作でまたもフランスの真の姿に迫る!

レビュー
(C)SRAB FILMS - LYLY FILMS - FRANCE 2 CINEMA - PANACHE PRODUCTIONS - LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – 2023

コロナ禍によりかなり特殊な状況で開催された4年前の『東京2020 夏季オリンピック』。今年はついに平常開催としてフランス・パリでのオリンピックが開催されるということもあり、「日本の選手は今回どんな活躍を見せてくれるだろう?」と国内での期待も高まっているところでしょう。

開催国フランスもまた大きな盛り上がりを見せている状況。世界的に見るとフランスはさまざまな国のルーツを持つ選手たちが集まり、近年多くのスポーツで急速にその実績を伸ばしている印象のある国であります。

しかしその一方で、多くの人種が存在することで抱える問題もさまざま。

今回紹介する映画『バティモン5』は、そんなフランスの知られざる一面より見えてくる社会的な問題にスポットを当てた作品。これを見れば「花の都パリ」などといったステレオタイプな視点は崩れていくこと間違いなし!?

映画『バティモン5 望まれざる者』概要

作品情報

(C)SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINEMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – 2023

移民家族が多く暮らすフランス・パリ郊外の集合住宅地区を、政策により一掃を企てる行政と住民たちの衝突を描いたドラマ。

監督・脚本を担当したのは、フランスのラジ・リ。監督は第72回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した2019年製作のフランス映画『レ・ミゼラブル』を手がけており、前作同様に本作でもパリ郊外の虐げられた人々の怒りより、フランス社会の問題を浮き彫りにしています。

あらすじ

(C)SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINEMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – 2023

移民の家系が多く暮らすパリ郊外の集合住宅街の一画・通称「バティモン5」では、再開発のため老朽化が進む建物の取り壊し計画が進められていました。

そんな中、アクシデントで前任の市長が急逝、急遽臨時市長に就任した小児科医のピエールは、自身の信念に従い冷ややかな視線でバティモン5の再開発政策を強行していきます。

住民たちは彼の横暴な進め方に反発、ケアスタッフとして住宅街に住むアビーらを中心とする住民側と行政側は緊張の中にらみ合いを続けます。

そして住宅で起きたある事件をきっかけに行政側は強硬手段を唐突に進め、住民と行政の対立は強烈な衝突へと発展していくのでした。

作品詳細

製作:2023年製作(フランス・ベルギー合作映画)

原題:Batiment 5

監督:ラジ・リ

出演:アンタ・ディアウ、アレクシス・マネンティ、アリストート・ルインドゥラ、スティーブ・ティアンチュー、オレリア・プティ、ジャンヌ・バリバールほか

配給:STAR CHANNEL MOVIES

劇場公開日:5月24日(金)より全国ロードショー

公式サイト:https://block5-movie.com/

フランスの真の姿からリベラルな思想への疑問を投げかける

(C)SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINEMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – 2023

ラジ・リ監督が発表した『レ・ミゼラブル』、そして本作。さらに「いわゆるフランスの「移民問題」に関するメッセージ」を称えた作品は、近年多く発表されています。

特に2024年はパリオリンピックを控えていることからでしょうか、2022年の『GAGARINE/ガガーリン』『ザ・タワー』など本作のようにフランスのスラム街の問題をうまくテーマに取り入れた作品の発表も顕著であります。

このテーマの焦点は、かつてフランスが政策として力を入れてきた「移民の受け入れ」。戦後のフランスでは国の復興のために労働力の確保が不可欠と考え、多くの移民を積極的に受け入れており、その移民たちがパリの郊外などの集合住宅地で、現在二世、三世世代となりフランス国民として生きている経緯があります。

一方、彼らの多くは労働階級で劣悪な環境で不条理な生活を強いられているものが多いのも事実。近代的な動向の中でこの地域に焦点が当てられ、再開発を起こそうとするもさまざまな問題が浮上しつつあるという一面があるわけです。

(C)SRAB FILMS – LYLY FILMS – FRANCE 2 CINEMA – PANACHE PRODUCTIONS – LA COMPAGNIE CINEMATOGRAPHIQUE – 2023

スラム街に生き住民の立場で行政と対峙するアビーは、あくまで正攻法で自分たちの権利のために戦いますが、その思いをことごとくつぶされるばかりか自分の住み家までもが奪われることに。

一方、急な抜擢で市長に選ばれたピエールは、自身の信念をある意味フランスの正しき選択であるといわんばかりに容赦ない強行手段を敢行、その結果自身に大きな危機が迫ることなど知る由もありませんでした。

この両者の対立からは、自由な国であるというフランスのイメージ、「花の都」という華やかなパリのイメージにさまざまな疑問を呈していくことでしょう。「リベラリズム(自由主義)をどう貫いてきたのか」という、フランスの国としての方向性に対する懸念が感じられるとともに、どこか近代フランスが抱えてきた呪縛のような感覚をおぼえられる作品でもあります。

レビュー映画・アニメ
広告
こねこ惑星 クリエイターズブログ