映画『違国日記』漫画賞総ナメの話題作を新垣結衣×新人・早瀬憩のタッグが熱演!

レビュー
(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

在累計発行部数は180万部を突破、「マンガ大賞2019」第4位、宝島社「このマンガがすごい! 2019」オンナ編第4位など多くの漫画賞を総ナメ、23年6月に連載終了するも「このマンガがすごい! 2024」オンナ編第5位、雑誌「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR 2023」コミック部門第1位を獲得という漫画家ヤマシタトモコの作品『違国日記』が実写映画化され公開となります。

知らない人と顔を合わせるのが極度に苦手な女性小説家。そんな彼女が生涯嫌った実姉の娘。どう考えても接点を設けることなどなかったであろう二人がふとしたことで出会い、迷いながらも新たな関係を築いていく。

二人の姿には「誰もが多かれ少なかれ感じている“生きづらさ”を優しくすくい上げている」というイメージが描かれ、多くの読者より「人生の本棚に入った」「 心が救われる」などと大きな反響の声が上がったといわれています。

絶賛の渦を巻き起こしたこの作品を、今最も旬な女優の一人である新垣結衣と、本作でデビューを果たす早瀬憩という二人がどのように表現したのか、非常に興味深いポイントであります。

映画『違国日記』概要

作品情報

(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

とあるきっかけで共同生活を送ることになった、人見知りな女性小説家と姪の奇妙な毎日を追ったドラマ。漫画家ヤマシタトモコの同名作品が原作。

監督・脚本を務めたのは『PARKS パークス』『ジオラマボーイ・パノラマガール』を手がけた瀬田なつき。

小説家・槙生役には新垣結衣、姪・朝役にはオーディションで抜てきされた新人・早瀬憩がそれぞれダブル主演として名を連ねています。そのほか夏帆、瀬戸康史、小宮山莉渚ら実力派が共演を果たしています。

あらすじ

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大嫌いだった姉の葬式で、35歳の小説家・高代槙生(こうだい まきお)は、姉の娘である15歳の田汲朝(たくみ あさ)と対面を果たします。

他に身寄りのない朝に対し「たらい回し」という無神経な言葉を吐く親族たちの態度に業を煮やし、槙生は朝を引き取ることを宣言します。

勢いで口走ったのもつかの間、他人との共同生活に戸惑う槙生。正反対に人懐っこい性格の朝と槙生は、衝突し悩みながらも親友の醍醐奈々や元恋人の笠町信吾の支えもあって、日々を過ごすうちに二人ならではかけがえのない関係を築いていくのでした。

作品詳細

製作:2024年製作(日本映画)槙生製作:2024年製作(日本映画)

原作:ヤマシタトモコ

監督:瀬田なつき

出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、中村優子、伊礼姫奈、滝澤エリカ、染谷将太、銀粉蝶、瀬戸康史ほか

配給:東京テアトル 、ショウゲート

劇場公開日:6月7日(金)より全国ロードショー

公式サイト:https://ikoku-movie.com

表面、内面のトータルに見えてくる「正反対なのにわりに近い存在」

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この作品の一番の魅力は、なんといっても二人の主役、新垣結衣と早瀬憩がそれぞれの役柄で見せる「表の顔」「裏の顔」という二側面といえるでしょう。

新垣が演じる小説家・槙生は人見知りが激しく、かつどこか表に自分をアピールすることが非常に苦手なタイプ。とにかく人付き合いが下手で、知らない人の前に立つとヘマばかりを連発してしまうところがあります。

一方で繊細な内面を持ち、幼いころからの姉との確執を持ちながらも朝のことを他人ごとのように言ってのける親戚一同の中で唯一手を差し伸べるなど、本人も気が付かない思いやり、優しさを擁する彼女。

人のよい友人、元恋人が今でも「人付き合いが苦手な」彼女とつながりを持ち続けている理由はこの性格にあるわけで、どこかダメ人間的なヘタレぶりと真剣に相手を見つめる一途な部分のギャップが非常に魅力的。新垣はこの二側面を非常にうまく演じ分けています。

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一方、早瀬が演じる少女・朝は一見人当たりがよく、誰にでもすぐなついてしまうような明るい性格を見せますが、心のどこかには人に頼れない弱さがあるなど、やはり表面と内面のギャップを感じさせる人物であります。

新垣と早瀬で共通するのは、お互いにこの内面にある隠れた性格が、物語の展開の中でふっと表情に表れる部分であります。言い方を変えると、この「内面の正直な部分」が明確に、そして的確なタイミングで表されることこそが評価されるべきポイントであり、両役者ともこの注目ポイントに対して、非常に印象的な表情を見せています。

(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

それぞれが演じる役は、一見正反対の人間であるとも見えますが、表面と内面のバランスを考えると実はわりに人間として近い存在ではないか、そしてその近い存在のそばにいることで「生きづらさ」を超えることができるのでは?などとふと思えたりします。

二人の奇妙な共同生活はいつしか家族というよりも友達のようなどこか愉快さを称えた関係へと変化していきます。漫画などで描かれるこのような関係を「こんな関係、あるはずがない」と批判される意見もわりにあると察しますが、むしろ本作のような作品は「こんな関係って憧れだな」と指針になるような物語であるといえるのではないでしょうか。

「実は性格が自分と正反対で、とても付き合えないだろうと思われる人物がいる」という方には、作品を見ることで相手に対して一歩歩みを進めてみたくなる、そんな作品でもあります。

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