映画『インフィニティ・プール』 父親譲りの「エグさ」満載!クローネンバーグ監督独自の世界観を遺憾なく発揮した秀作ホラー

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(C)2022 Infinity (FFP) Movie Canada Inc., Infinity Squared KFT, Cetiri Film d.o.o. All Rights Reserved.

「クローネンバーグ」、その名を聞いてピンとくる方は、まず間違いなく80年代ホラーツウでしょう。

デヴィッド・クローネンバーグ。『スキャナーズ』(1981)、『ヴィデオドローム』(1982)といった名作ホラーは、「グロい」「怖い」というよりは「衝撃的」というイメージ。『ゾンビ』シリーズから始まった生々しさとは一線を画した作風で高い評価を得ており、86年の『ザ・フライ』で一気にメインストリームに躍り出た方でありました。

今回紹介する映画『インフィニティ・プール』を手掛けたのは、そのクローネンバーグの息子であり映画監督のブランドン・クローネンバーグ。

『アンチヴァイラル』(2013)、『ポゼッサー』(2020)と、まさに父親譲りの「悪夢を見ているような」独特の世界観を描く世界観は、この作品でも遺憾なく発揮されており、文字通り「エグさ」が爆発した作品であります!

映画『インフィニティ・プール』概要

作品情報

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鬼才ブランドン・クローネンバーグ監督の『アンチヴァイラル』『ポゼッサー』に続く長編第3作。新作を書けないことに悩む作家がとあるリゾート地で遭遇した悪夢のような体験を描きます。

主演は『ズーランダー』シリーズ、『ゴジラvsコング』などのアレクサンダー・スカルスガルド。他にも『X エックス』『Pearl パール』のミア・ゴス、『タクシー運転手 約束は海を越えて』『戦場のピアニスト』などのトーマス・クレッチマン、『月影の下で』のクレオパトラ・コールマン、『イヴ・サンローラン』(監督/脚本)『ブルゴーニュで会いましょう』などのジャリル・レスペールら実力派の俳優陣が集結しています。

あらすじ

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次作を書くことに悩んでいる作家ジェームズと資産家の娘である妻エムは、ある日高級リゾート地として知られる、とある孤島へバカンスに訪れます。

そこで彼はジェームズの作品のファンだという女性ガビに話しかけられ、彼女とその夫とともに一緒に食事をすることになります。

楽しい時を過ごした2組の夫婦は意気投合し、ホテル側より観光客は行かないよう警告されていた敷地外へとドライブに出かけます。

そして彼は、その帰りに不運にも大きな事故を起こしてしまい、身柄を拘束されてしまいます。

ところがこの孤島では「罪を犯した観光客が自分のクローンを身代わりにすることで罪を逃れることができる」という奇妙なルールが存在しており……。

作品情報

製作:2023年製作(カナダ・クロアチア・ハンガリー合作映画)

原題:Infinity Pool

監督:ブランドン・クローネンバーグ

出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミア・ゴス、クレオパトラ・コールマン、トーマス・クレッチマン、ジャリル・レスペール、アマンダ・ブルジェルほか

配給:トランスフォーマー

劇場公開日:4月5日(金)より全国ロードショー

公式サイト:https://transformer.co.jp/m/infinitypool/

父親譲りともみられる映像センスで表された「衝撃性」満載の物語

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自らが犯した罪を、自らのクローンがかぶり処刑されるというこの物語。

設定だけ見るとSFチックなテーマにも思えますが、物語のポイントとしてはどこか巧みに視点をずらすことで「エゲツない」と思わせる方向に向けている印象をおぼえます。

自らの罪を、「自分ではない」自分がかぶるというルールの存在に味をしめ、悪事を働いては捕まり、分身に罪を償わせては自由になり、また悪事を働いて…と、どこか胸糞の悪くなるような展開。

そしてダークな空気感は増すばかりの中で、主人公ジェームズはクライマックスで衝撃的な事実に対面し絶望の縁に立たされ物語は幕を閉じます。

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シーン一つ一つの空気感は、どちらかというと変に奇をてらわないストレートな表現。全般に薄暗さすら感じられる作品のトーンのまま物語は進んでいきます。

「エグい」と思わせるような鮮血シーンは、どちらかといえばそのシーン自体のトリッキーさ、効果を最小限とし、他のシーンとの組み合わせで「見るものの感情を動かす」効果を狙っているようでもあります。

一方で映像はかなりアバンギャルドに展開し、その急激な展開に見る側は文字通り翻弄されていくばかり。こうした特徴的表現ポリシーはクローネンバーグならではというポイントではないでしょうか。

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また常に人の間で「どのような感情を見せればよいのかわからない」と戸惑った表情のまま運命に翻弄されるアレクサンダー・スカルガルドの表情、更に眉のない顔で怪しさを強烈に発するミア・ゴスの存在感と、役者陣の表現も抜群。最高に怪しい雰囲気をそれぞれの個性がうまく引き立てています。

時に現れる刺激的なシーンは、あくまで物語の真意を色濃く描くための構成要素。人間の深層心理にあるおどろおどろしさ、醜悪さを集約した悪夢のような光景の数々は、父親のセンスを彷彿させるものにも見え、重厚さすらおぼえてくることでしょう。ホラー/サスペンスファンには必見の作品であります!

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