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ここから続き
前回はスライスソフトで3Dプリント用のデータを作るところまでのお話でした。
今回は、実際にプリントアウトするところからのお話ですが、途中の写真を撮り忘れたのでいきなり出力品の写真から!
この幾何学的な模様がついている鉄板(擦り傷だらけ)がビルドプラットフォームで、それにくっついている水色の飴細工のようなものが3Dモデルの出力品です。
今回まずはサイズ確認のためのプリントアウトだったので手元に余っていた格安クリアレジン(低品質)を使いました。
クリアブルーを使ったのでそれっぽい色で出ていますが、出力品の色は使用するレジンの色に依存するので、例えば黒いレジンを使えば黒色で出力されます。
クリアレジンって出力した直後はとても綺麗な透明感なんですが、水洗いして二次硬化したらすりガラスくらい曇っちゃうんですよね…
レジンのメーカーや種類によって仕上がりは全然違うらしくて、高品質なレジンであればほぼ曇らないようなものもあるそうです。
クリアの質感に拘りたければ格安レジンはやめた方がいいですね(笑)
このクリアレジンの色の変化は後ほどの写真でご理解いただけると思います。
この出力品をビルドプラットフォームから剥がして、水で洗浄して(今回は水洗い専用レジンなので水道水でOK)から、水分を飛ばして乾かして、二次硬化という作業に入ります。
レジンは人体に有害でアレルギー症状が出る場合もあるので、扱う時はマスク、保護メガネ、保護手袋、肌の露出を抑える衣服が必須です。
プラットフォームから剥がす時は、金属製のヘラやゴムハンマーを使ってガンガン叩いて剥がすこともあるのですが、この時に表面に残っている液体のレジンや固まったレジンのかけらが飛び散ることがあるので特に注意が必要です。
出力品の洗浄にも注意が必要で、レジンを直接下水に流すのは良くないため、流水でじゃばじゃば洗うのではなく、水を溜めたボウルなどの中で洗います。
もちろんこのボウルは調理用と共用などはダメです。
100均のものでもいいので、レジン洗浄専用に用意すべきです。
ボウルに残っている洗浄に使ったお水は、液体レジンが混ざった有害な汚水です。
下水にそのまま流さずに天気のいい日に太陽に当ててレジンを固めて、固形になったレジンとそれ以外の水を分別して捨てる方が良いです。
ここまでお読みいただいて「3Dプリンタってリスクも多そうだし汚水などの処理が面倒だなぁ!」って思った人、大正解です。
出力自体が簡単でないことに加えて、めちゃくちゃいろんな手間がかかるのはもちろん、人体や環境への配慮なども必要になるんです。
慣れればどうってことないですが、労力の先にある魅力を見出せない人にはお勧めできない娯楽なんです。
さて、ここからは余計な水分を飛ばした後の二次硬化のお話です。
出力されたばかりのレジンって固まり方が甘い状態であり、柔らかくて強度もないのでそのまま使うことができません。
硬さのいい例えが思いつかないのですが、茹でる前の乾いたパスタくらいのイメージですかね?
ふにゃふにゃではないけどある程度曲がるくらいの柔らかさであり、ちょっと曲げると突然折れちゃうみたいな硬さです。
これに紫外線を当てて本格的に固めるのが二次硬化という作業です。
二次硬化には紫外線を当てる専用の機械を使うことが多いですが、私が使ってるのはこれ。
私は去年5000円くらいで買った記憶があるんですけど、円安の影響かだいぶお値段が上がってますね。
二次硬化は正しくやろうとすると色々と気を使わなければならないことが多く、私が使っているターンテーブル方式はベテランの方には「ダメな方式」って言われることもあります。
しかし、個人利用の範囲でこの方式のデメリット(硬化が不均等とか歪んで固まりやすいとか)が納得できるのあれば入門機材としてはぜんぜんアリだと思います。
もっといえば、これらのデメリットを許容できる人は二次硬化機すら使わずに、太陽に一定時間当て続けて固める人もいます。
紫外線には波長があるらしいのですが、波長が合えば100均で売ってるようなハンドメイド用の硬化ライトとかでも固まらないことはないそうです。(私は試したことがないですが)
この辺りは、どのレベルのものを出力しようとしているかや、リスクや予算と相談しながら落とし所を決めるといいと思います。
今回はサイズ確認が主目的のお試し出力なので適当なレジンやターンテーブル方式二次硬化で進めていますが、もしも売り物として生産するのであればレジンも良質なものに変えるし、二次硬化も歪みがなく均等に固められる機材に変えると思います。
サイズ確認
今回は細かな造形などは無視して、頭にフィットするサイズかどうかを確認することが目的です。
経験を積めばモデリング段階である程度想像がつくんでしょうけど、自分はまだまだ現物でサイズ確認しないとピンと来ないんです。
ということで、素体となるメガミデバイスに装着させてみました。
後ろ髪の一部がうまく出力されていなくてちぎれていますが、サイズはけっこう良さそうに見えますね!
クリアレジンはほんのりと透けてくれるので、フェイスパーツとの兼ね合いを見る時などは状態が把握しやすくて便利です。
出力直後のクリアレジンの写真を見返して欲しいのですが、レジンの色はだいぶ変わっちゃいましたよね。
これ、クリアブルーらしいんですけど想像するクリアブルーとはかけ離れてるかも?
レジンの種類によって発色を含めた劣化具合も大きく変わるそうなので、いいレジンならもっといい感じに仕上がるんでしょうね!
ところで、前髪と後ろ髪はこんな感じでパーツ分割して、この写真には写っていませんが固定用のピンを造形しています。
こういう凸凹で接続させる部分ってレジンの伸縮や出力精度の関係で、ギリギリのサイズで作るとハマらないことが大半です。
なので私は穴の方を気持ち大きくして出力するのですが、だいぶその経験値がたまってきたようで今回は一発ではまりました!
塗装して確認
クリアレジンだと造形の把握は少しぼんやりしてしまうので、フェイスパーツとのフィット感や位置関係が確認できたら、造形の全体把握のために塗装します。
エアブラシで塗装してみたものがこんな感じです!
塗料はティターンズブルーっていう色です。
Zガンダムに出てくるティターンズモビルスーツ専用の色らしいのですが、個人的にかなり使いやすい色なので積極的に使っています。
ティターンズのプラモデルを塗ったことは一度もないのに(笑)
塗装や調色にこだわらない人は、ダイソーなどの100円スプレーでも十分な場合がありますね。
私は肌色とのバランスも検討したかったので、今回は理想に近い色(ティターンズブルー)で真面目に塗りました。
色を塗ることによって見えてきたこととして
・髪のポリゴン感が強い → 3Dモデル段階での問題
・後ろ髪のボリュームがありすぎる → これも3Dモデル段階での問題
・後ろ髪が一部欠落している → 出力の向き設定やサポートの問題っぽい
などがありました。
ここから3Dモデルを編集するソフトblenderに戻ってモデルを修正したり、スライサーで安定して出力できる方向やサポートの付け方を検討するトライアンドエラーの作業です。
ヘアパーツを3パーツ化
最初の出力の問題点を解決するために3Dモデルを編集していたところ
・組み立てると隠れてしまう無駄な髪の毛がある → レジンの無駄だし、形状が複雑になるほどミスの発生源になる
・形状が複雑すぎてニッパーで切り出しにくい
・その複雑さが出力ミスにもつながっている
・サポート跡が目立つところに残る箇所がある
など新たな問題点に気づきました。
その問題を解決するために、ヘアパーツの後ろ部分をさらに二つに分割したら出力しやすいのではと考えました。
ということでこれも簡単分割で、後ろ髪を真ん中髪に被せる形にしてみました。
VRoid Studioで作ったモデルの特性か、髪の毛がいい感じにカツラっぽい重なりで表現されていたので難なく分割できたのがよかったです。
一番後ろの髪は接着剤で自分の好みの角度に接続するの前提として、いったんは接続ピンなどもつけていません。
そうそう、この段階で3Dモデルもスムーズに見えるようにポリゴンを調整しました。
ポリゴン数が倍以上になったけど、出力品もかなりスムーズで綺麗になりました。
blenderに詳しい人がこの画像を見ると「メッシュがフィルされていなくて内側(赤い部分)が見えてるじゃん」と気づくかもしれませんが、3Dプリンタで問題なく出力できたのでいったん無視しています。
これらの部分は極小サイズなので、レジンとレジンの間が詰まって結果としてうまく出力されているんだろうなと想像しました。
3パーツを出力したらこんな感じ!
髪の毛の欠落もなく、サポート跡もほとんどがパーツの内側(隠れる側)にくるのでニッパーで切っただけのゲート跡未処理でも全く目立たず、見栄えがかなり良くなりました。
接着予定だった一番後ろの髪は偶然にもパチっと綺麗にはまって、接着しなくてもしっかり固定できたのでラッキーでした。
最近はインナーカラーが入ったキャラクターも多いので、そういう色分けのしやすさという意味でもこの構成はありかもしれません。
まだ天気のいい日に時間が取れていないので現状は未塗装のままですが、これを塗装して問題がなければヘアパーツはこれを微調整で完成にしちゃうと思います。
塗装した着用写真は次回お見せしますね!
今回のまとめ
3Dプリンタでの造形はいろんなめんどくささやリスクに向き合いながらトライアンドエラーを繰り返すことになるのですが、ユーザーのスキルや用途によって落とし所も変わってきます。
プラモデルの改造に慣れている人が一点ものをつくりたいという感じなら、3Dプリントはおおまかな造形で終わらせてしまって、あとはパテを盛ったりヤスリで磨いたりしてゴールを目指すほうが良いでしょう。
一方、ガレージキットとして販売したいなどの場合は、安定した量産体制の確立はもちろん、購入者の組み立てやすさや強度まで考えて行かなければなりません。
私は「1点のみでいいんだけど、いいものができればガレージキットとして売りたい」という野望があるのでもう少しトライアンドエラーを頑張ってみます!
隙間時間でゆっくりと進めているので、少し先になるかもしれませんが続報をお待ちください!