前回
できるだけ簡単にMVを作ろう!
今回はアバターを使った活動をしている人に向いたお話が中心です。
まだみてない人はまずは動画を見てください。
作曲する人にとって悩ましいのが楽曲の発表方法だと思います。
サブスクで配信というのがストレートかもですが、サブスク配信てなかなかバカにならないコストがかかって、作曲者や歌い手いに発信力がなければどんなに素晴らしい曲でも埋もれて終わっちゃいます。
自分で弾き語りとかしてる人ならささっとライブなどしちゃえば良いんでしょうけど、活動の方法によってはささっとライブが難しい人もいるし、「ライブ向きとはいえないけど素晴らしい曲」みたいなのもたくさんありますよね。
そんなこんなで、ぼっち寄り駆け出し活動者さんの選択肢になるのが「MVを作ってYouTubeに投稿」「作ったMVをショート編集してXやTikTokなどにも投稿」かもしれません。
でも、動画編集って慣れないとめっちゃくちゃ時間がかかるし、こだわりすぎると永遠に終わらないやつですよね…
私もその点に困っているので、今回の「余白」では「できるだけ早くMVを作る」をテーマにいろいろやってみました。
今回のMVは瑠璃星ちゃんの撮影を含めて3時間くらいで出来上がりました。(これを早いと取るか、遅いと取るかは人それぞれですが、私的には早かった!)
これらを踏まえて、今回は私が意識している「MV制作の時短」についてまとめました。
時短1 アバターを使っちゃおう
ネットで顔を出さずに匿名活動してるからこそMVって困っちゃうところなんですよね。
だって、バンドとかリアルでシンガーをやってる人だったら自分の生身を動画素材にしたら良いですもんね。
ライブ中の後ろ姿の動画とかあれば、それに合わせて楽曲を流せば口が見えないので違和感少なく流用できたりしますもんね。
でも、顔出しせずに活動している人はこの方法が使えない。
実写を使わない方法で私が一番やってみたいのは手描きアニメみたいなMV(ずとまよとかでもうすっかりお馴染みですよね)なんですが、あれ、たぶん、自分で絵が描けたとしても制作に数ヶ月かかっちゃいそうですし、そもそも絵が描けない…
そう!なんだかんだで、アバターで活動している人は、自分のバーチャルな生身であるアバターを使うのが一番良いんですよね!
すでに活動中の方であれば、ファンにとって馴染みのあるアバターというのはシンボル的にもなりますし、アバター活動者にとってこれは「実写」と同意なんですよね。
今回の被写体はもちろん、「余白」を歌ってくれた瑠璃星こねこです。
風景主体のシーンはソーシャルVRで撮影しちゃおう(私はcluster)
アバターを撮影する方法はいろいろありますが、VRChatやclusterなどのソーシャルVRで自分の曲の雰囲気にあったワールドを見つけて、そこで撮影するのが手っ取り早いです。
VRChatは画質が綺麗なのですが私はほとんど使ってなくて、利用規約などが不明です。(MV作ってる人を見かけるのでダメじゃなさそう)
私がメインで使ってるclusterは画質こそ良くないのですが、「ワールドは基本的にはどれも自由に使って良い、動画にしても良い、他人のアバターが映り込んでても良い」というルールになっていてとてもありがたいんです。
参考:https://help.cluster.mu/hc/ja/articles/19767711353625-スクリーンショット-映像利用のガイドライン
中には「ワールドを勝手に使うの禁止」みたいなマイルールを作っている方がおられます。
clusterの利用規約的にはOKなはずですが、このような主張のあるワールドを使ってしまうと将来的にトラブルとなるかもしれません。
ワールドをお借りする時は「やっかいなことにならないか」のチェックをして、こういうマイルールありのワールドは避けた方が良いかと思います。
アバターのアップや、定番の動きは他のツールを使うのもいいかも
clusterは使い勝手がいいのですが、アバター自体の解像度が低めなのでアバターを撮影しようとするとあまり良い映像が撮れません。
風景寄りの映像を撮る時は頼りになるのですが、アバターの表情や細かな動きなどを撮る場合は適さないこともあります。
その場合は、clusterにこだわらずに他のアバターツールを使うのが良いでしょう。
多くの方は自分のアバターのVRMファイルを持っていると思います。(cluster内で作ったり買ったりしたアバターや、REALITY連携で使っているアバターはVRMファイルが入手できないのでここの話からは外れます)
このVRMファイルはとても汎用性が高くて、他のアプリと連携させると現実の景色にアバターを召喚したり、専用のツールでポーズや動きをつけたりすることができるんです。
今回はお馴染みのVRoid Studioや3teneを使っています。
ツールを使い分けての撮影ポイント
撮影ポイント1 撮影はざっくり、後から辻褄や速度を合わせる
clusterなどでアバターを使ってMVを撮影する場合、「脚本を書いて曲に合わせて演技をして、カメラワークもこだわるんだろうな」と感じる方もおられるかと思いますが、それやっちゃうと時間がいくらあっても足りません。
clusterでは「アバターではなく風景主体の映像」の方が向いているので、曲の雰囲気や世界観に合わせたワールドを選んで、そこで汎用的なカットをカメラの角度を変えながら何パターンか撮っておくというのが良いかと思います。
風景映像主体の部分ってイントロや間奏など歌がない部分で使うことが多いので、リップシンク(口の動きと声の同期)を意識しなくても良い場合もあります。
これらに加えて、後ろ姿など表情や口元が見えないカットを撮り溜めておくのも使い勝手が良いです。
撮影した動画パーツは動画編集ソフトのほうで曲調やタイミングに合わせて再生速度を変えて、「後から辻褄を合わせる」のがベストです。
また、同じアングルの映像が続くと間延びして見えるので、別アングルの動画に随時差し替えて行くとメリハリが出しやすいです。
速度の変化で動きに違和感が出たり、拡大で解像度に粗が出た場合は、ぼかし機能でぼかしちゃうのもアリです!
撮影ポイント2 足までしっかり動かしたい場合は、背景を単色にできるVRM用ツールで
clusterで撮影していると「アバターが思い通りに動かない」という問題にも直面します。
VRゴーグルであれば比較的自由に動くのですが、それでも下半身に自分の意志は反映されません。(専用の機器を別途用意すればある程度反映されるけどハードルが高いよね)
そもそも、PCやモバイルでclusterを使ってる方だと上半身すら思い通りに動かないかもですね。
そんな時は「clusterは風景中心の素材集め」と割り切って、他のツールを使いましょう。
例えば、VRM形式のアバターを自分で作ろうとする時に、大抵の方が触ったことがあるであろう「VRoid Studio」にも、アバターのポーズをつけたり動かしたりする機能があります。
アバターを自由に動かしてポーズを決めて写真にできたり、アバターのアニメーションを選んで動いているところを動画にできたり(後述)と結構使い勝手が良くて、アバターの画質自体もclusterよりも良くできます。
ここで使い勝手がいいのが標準で用意されている「歩く」や「走る」のモーションなんです。
曲のシーンとシーンを繋ぐ時に、これらのモーションで時間稼ぎするという手法もあるので、これらのモーションはいつでも使えるように手元に残しておくのが良いでしょう。
なお、動画の場合は背景を明るい緑一色など(いわゆるグリーンバック)にしておけば、動画編集ソフトでクロマキー加工しやすくなります。
ただ、アバターだと髪色が緑という子もおられ、髪色が緑の子は緑背景とかぶってしまうので「自分のアバターに使ってない色」を背景にする方が良いかもです。
そもそもなぜ緑背景が選ばれているかというと、現実の人間の色に被りにくいという理由だそうです、アバターの場合はアバターの色に被らない背景色を選んでください。
補足:VRoid Studioでの動画撮影について … 執筆時点のバージョンでは、VRoid Studioに動画録画の機能はありません。iPadやmac等のApple端末であれば、そのままVRoid Studioで動いているアバターを画面収録して動画を作るのが手っ取り早いです。画面収録だと解像度が端末の画面サイズに依存しちゃうので、できるだけ大きな画面で収録した方が良いかもです。WindowsやAndroidもたぶん似たようなやり方なんだろうけど、そっちは詳しくないので気になる方は調べてみてね!
歩くモーションの話ですが、「余白」のMVの冒頭で早速使っています。
歩くモーションはクリップの再生速度をコントロールして、バスドラムなどの「ワン、ツー」っていうリズムに足の動きを近づけてあげると自然になりますし、みている人もノリやすくなります。
なお、再生速度を極端に遅くするとコマ飛びみたいにカクカクしちゃうので、そういう場合は実際のテンポの倍の速度で動きを合わせるというのも方法の一つです。
撮影ポイント3 VRゴーグルがあるなら全身表現してみる
ふたたびclusterの話に戻ります。
clusterをVRゴーグルで遊ぶと、腰から上をほぼ現実と同じように動かせます。
どうしても細かな動きは飛んじゃうのでキレキレの素早いダンスというのは難しいのですが、ゆったりと舞うような動きであればほぼ再現されると思います。
「余白MV」のギターソロの部分では、瑠璃星ちゃんが楽曲を表現した舞いを披露してくれています。
どうしても解像度の荒さが目だったり、アバターが破綻したりということがあるので、曲の雰囲気に合わせて動画編集ソフトでぼかしなどを併用するとうまく誤魔化せることもあります。
もしもアバターの解像度や動きの精度にこだわるのであれば、cluster以外のソーシャルVRを探してみるのもいいかもです。
撮影ポイント4 口の動きにこだわるならVTuber用ツールを使う
clusterは声に合わせてアバターの口も動くのですが画質があまり良くないので、アップやアバターの表情主体の映像は撮りにくいかもしれません。
この場合は、VTuberさんが配信などで使うツールを使って撮影するのが良いかもしれません。
これ系も今はスマホアプリからPCソフトまでいろいろあるのですが、私が使ってるのは3teneというPCソフト(macでもWindowsでも使える)です。
私はこの界隈はあまり詳しくなくて、macでも使えるもので機能がしっかりしているものが3teneくらいというだけで、他と比較したとかなくこれを使っています。
3teneは無料版もあるのですが、有料版の方じゃないと何かできないことがあって私は有料版を使っています。(なんで有料版にしたか思い出せないけど、たぶん音声を再生しながらのリップシンクが有料版じゃないとできなかったとかかも?違ったらごめん。)
有料版も個人利用なら3,300円なので、この先の人生でしばらくお世話になるツールとしては爆安ですね!
3teneにはいろんなモーションがついていて、瑠璃星ちゃんのサビのモーションは3teneに入っていたスピーチ系のモーションです。
ずっとみてると違和感があるのですが、初見だと顔や歌詞に目がいくので違和感を持たない人も多いかもですね!
時短2 字幕の出し方困るよねぇ!
MVなので歌詞を出したいですよね!できればカッコよく出したいですよね!
でも、「タイミングに合わせて歌詞をフレーズで表示」「文字に動きをつけたりサイズを変えたりする」みたいな動画を手作業で作成するとめ〜ちゃくちゃ時間がかかっちゃうんです。
大雑把で良いやって割り切っても、それなりの時間が必要になる工程です。
でも大丈夫!
歌詞の表示についてもいろんなツールがあって、私が今回使った無料ツールはこちらです。
「TextAlive」という歌詞動画を簡単に作ってくれるサービスです。
どこのサービスなんって怪しむ方もおられるかもしれませんが、TextAliveは、「産業技術総合研究所メディアインタラクション研究グループが研究開発しています。学術研究目的で公開しながら実証実験中です」と記されています。
大雑把な言い方をすれば、国が研究がてら運営しているサービスなんですね。
楽曲と歌詞テキストをアップロードして、歌詞の表示テンプレートを選べば、あとは自動で歌に合わせて歌詞をいい感じに表示してくれるんです。
どうしてもちょっと違うなという箇所が出てくるのですが、その場合は気になる箇所だけをタイミング修正すればOK!
もしも、これを使わずに歌詞表示を動画編集ソフトで手作業でやるとしたら、歌詞テキストをいい感じに分割→分割したテキストを動画のタイムラインに入れる→タイムラインに入れたのを歌のタイミングに合わせて微調整を繰り返す→文字の出方を個別に設定するなどなど、私にとっては一番の苦行となるのですが、この辺りをほぼ自動でやってくるのは助かりますね。
こだわらなければこれだけで歌詞動画になるのですが、私は瑠璃星アバターを一緒に入れてちょっとだけ映像に拘りたかったので、TextAliveで作った動画の文字だけを出力してパーツとして使うことにしました。
背景と切り離して歌詞の表示の部分だけ動画として書き出せるのはめちゃくちゃ助かる!
ところで、TextAliveは使い方が難しいというわけではないのですが、操作方法などにクセがあって直感的にささっと使える感じではありません。
わかってしまえば簡単なのですが、「触ればわかるでしょ」ってノリで向き合うと、わかるまでが苦労しちゃうと思います。
この辺りの部分をわかりやすくまとめてくださっている方がおられるので、TextAliveを使いたいなと感じた方は以下のサイトなどを参考にすると良いでしょう。
時短3 フリー素材を重ねてリッチに!
動画全般に言えることなのですが、映像に奥行きを出すのにお手軽な方法がパーティクル的な映像を重ねるというやつです。
動画の無料素材サイト(海外のものが多い)などで、「particle」などと検索すると光の粒が動くような素材がいろいろ出てきます。
例えばこんな感じ
こういう素材を
・曲のテンポと違和感のない再生速度にして
・違和感なくリピートできる状態にして(もともとリピートできるようになっている素材も多いけど、なってなかったら普通の再生→逆再生→普通の再生って感じでクリップを繋げるとお手軽に無限リピートを作れる)
・素材が目立たないようにめーっちゃくちゃ薄めに透過して一番上のレイヤーに持っていく
って感じでやればのっぺり感が薄れます。
相性のいいパーティクル素材を二つ組み合わせて、一番奥のレイヤーにも設置して、奥側の再生速度を手前よりも遅くしてあげるともっともっと奥行きが出ます。
これ、いろんな動画に使えるテクニックなのでぜひ覚えておいてくださいね!
時短4 あとはアップやスクロールを多用して!
限られた素材で映像を作る時はどうしても間延びしたり、退屈になるシーンが出てきます。
間延びさせないための手っ取り早いのが、クリップをゆっくりアップするとか、ゆっくりスクロールさせるって方法です。
だんだん薄くしていってクリップをフェードインやフェードアウトさせることも多いですね。
今回はギターソロのところで使ってる手法ですが、アバターの描画におかしな部分や動きの飛びがあるなどを目立たなくさせる時にも有用な方法です。
動画を作っている時に再生してみて、ちょっと絵的な退屈さを感じる場所があったら、アップ、スクロール、フェードなどを試してみたら良いでしょう。
別案 Vフレットで弾き語りもあり!(超時短)
「アバターの弾き語り動画を撮る」という目的に特化したアプリとして「Vフレット」というものがあります。
基本機能は無料で使えて、アバターのVRMファイルを読み込ませるだけで弾き語り動画が撮れるという優れものです。
このたび瑠璃星ちゃんがアコースティック版も歌ってくれるということで、Vフレットで弾き語り動画を作ってもらいました。
ギターを弾いてるっぽい動きをしてくれるというのが目玉機能ですが、動きを楽曲に合わせているわけではなくて指定したテンポに合わせて動いてくれているだけです。
なので、キメの部分やギターが無音になる部分などに拘りたければ、カメラアングルをうまく誤魔化したり、動画編集ソフトで別の映像をカットインするなどの工夫が必要です。
また、Vフレット自体に録画機能はないので、OSの画面収録機能やOBS等収録ツールを併用することになります。
Vフレットって自分のやりたいことがマッチしたらものすごく便利なツールなのですが、融通が効かない部分もあります。
・アバターの基本ポーズが固定(座りやあぐらなど男性的なポーズが多いので女性アバターやスカート型アバターには向かない)
・背景が独特でパターンが少ない
・カメラの手ぶれ演出みたいなのが入ってるんだけど癖が強くて、無効にもできないっぽい
これらの点は有料版でもあまり解決しないっぽいので、私は無料版を使わせてもらっています。
この辺りが柔軟になるなら有料版(3,000円)はめちゃくちゃ安いって感じるんですけどね!
アバターのキャラクター性や曲調がVフレットの表現にマッチしたら超時短で弾き語り動画ができるので、覚えておけば使えるタイミングが来るかもですね!
Vフレット https://booth.pm/ja/items/3024741
まとめ
というわけで、今回はMVをサクッと短い時間で作るための方法をいくつかご紹介しました。
そもそも、動画編集ソフトによってできる、できないこともありそうですが、ここでご紹介した方法はフリーソフトも含めて大抵の動画編集ソフトでできるかなと思いました。
楽曲をガンガン作ってMVにして公開したいけど、動画は本職じゃないからそこに手間取っちゃうみたいな人は私だけじゃないと思います。
手抜きにならない程度にMV制作を簡略化してスピードアップさせ、本業である楽曲作りにより多くの時間が避けるようになったらいいですよね。
この辺りについては、まだまだ書ききれていないことやいろんな小技があるので、気が向いたら続編を書きますね!
ちなみに、私が使っている動画編集ソフトはAdobe Premiere Proが中心です。
もう、笑っちゃうくらい高くて、私程度の用途だと他に良いソフトがあるんだと思いますが、これの使い方を覚えちゃったのと、やっぱりネットにある情報や素材が豊富なのが助かるんですよね。
ま〜〜〜ったく金額に見合ってなくて、これっぽっちも出費を取り戻せていないので、しっかり時間が取れたら脱Adobeして別の動画編集ソフトを勉強しようかなと思ってます(笑)
Adobe税、個人クリエイターには高すぎてほんと高いし高い…
MV
作詞・作曲:こねこ星人
歌唱・出演:瑠璃星こねこ
アートワーク:そら嬢