映画『フューチャー・ウォーズ』80年代の懐かしさすら感じられるB級SFコメディー!

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(C) 2022 Pyramide Productions - Allons Voir SPRL - France 2 Cinema

世紀末の人類滅亡回避に挑むタイムリープ・ストーリーといえば、SF映画の金字塔『ターミネーター』シリーズを思い浮かべる人も多いことでしょう。

今回紹介する映画『フューチャー・ウォーズ』はそんな80年代のB級ジャンル映画を彷彿する光景と、フランス語コメディーをうまくミックスさせたテンポ感抜群のSF作品であります。

捧腹絶倒のオープニングからハラハラドキドキのアクション、そして現世に何かを訴えかけるようなメッセージ性まで備えた、何でもありのごちゃまぜストーリー。

単なる「80年代SFジャンル映画」の模倣ではない、巧妙に計算された感すら覚える必見のSF映画であります。

映画『フューチャー・ウォーズ』概要

作品情報

(C) 2022 Pyramide Productions – Allons Voir SPRL – France 2 Cinema

タイムトラベルに挑んだ一人男と、彼の思いに巻き込まれる人々による地球の存亡をかけた戦いを描いた、フランス発のSF映画。

作品のベースはフランソワ・デスクラック監督とその友人フローラン・ドリンが低予算で制作、発表後にフランスでカルト的人気を集めたWEBドラマシリーズ。

このドラマをもとに、デスクラックが監督・脚本、ドリンがタイムトラベラー役を務めて劇場長編映画を完成させました。

あらすじ

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2555年、終末の危機に瀕した地球で、一人の男性が人類を救うべくタイムトラベルに挑みます。

彼の任務は2022年へ向かい、未来を変え世界を滅亡の危機に向かわせたある事件を阻止すること。

一方で2555年には歴史の改変を取り締まる時間警察が存在しており、男性の決意を阻む追手が迫っていました……。

作品情報

製作:2022年製作(フランス・ベルギー合作映画)

原題:Le visiteur du futur

監督・脚本:フランソワ・デスクラック

出演:アルノー・デュクレ、フローラン・ドリン、エンヤ・バルー、ラファエル・デスクラック、スリマン=バプティスト・ベルフン、オードリー・ピハウル、マシュー・ポーギー、ヴィンセント・ティヘ、アサ・シラ、レニー・チェヒノほか

配給:クロックワークス

劇場公開日:5月10日(金)より全国ロードショー

公式サイト:https://klockworx-v.com/future/

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B級感、コメディー…そして裏打ちされたメッセージ性

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フローラン・ドリン演じるタイムトラベラーのスチームパンクなスタイルをはじめ、いわゆる昔から描かれているサブカル的な未来像を踏襲したタイムリープ物語であります。

他方、冒頭に見られる安っぽいセットと、フランス語のイントネーションをうまく生かした、スピード感あふれるコメディー・トークは、リュック・ベッソン製作の映画『TAXi』シリーズを彷彿するテンポ感。非常に見ていて引き込まれ、つい夢中になってしまいます。

フランスがオシャレ、スタイリッシュな国という認識はもはや昔の話。多種多様な文化性すら感じられるのは、人種のるつぼといわれるフランスだからこそと、改めて感じられることでしょう。

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世紀末のディストピア感満載な風景は、映画『マッドマックス』や日本のコミックス『北斗の拳』などを彷彿するもの。このごった煮間にコメディー要素をうまく載せたセンスは、製作サイドに見られるまさに「この国の人」こそのものという印象でもあります。

一方でかすかに見られる国民性、国同士の対立性などの構図は、現世界でのフランスという国における他国の印象を如実に表しているようでもあり、単に笑えるだけではない「風刺」的な作品という印象もあります。

またこの作品は、ある意味ネタバレになりますが冒頭を除き「誰かが殺される」ことがありません。なんとなくハラハラする展開でもどこか笑いをにおわせ、最終的な締めをどうにかハッピーエンドとしてまとめようとしている感覚も見えてきます。

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総じて見ると、コメディーチックな世界観によって、現世の世界におけるさまざまな対立問題に対して、新たな視点を投げかけているようにも見えてくるものであります。

タイムリープものとしてはいわゆる「タイム・パラドックス」、つまり時間経過上の矛盾をどう解決するかという課題がまとわりついてきますが、本作ではこの課題をどちらかというとあいまいなままでエンディングを迎えます。この点を含めどこか完全ではない粗削りな作風が、逆に作品のもっとも訴えたいメッセージ性を浮き立たせているようでもあります。

その意味では、笑わされながらもさまざまな問題を想起させられる作品といえるでしょう。

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