映画『ウォーフェア 戦地最前線』アレックス・ガーランド監督×A24×元兵士によるリアルな「戦争」の一場面

レビュー
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『シビル・ウォー アメリカ最後の日』に続きアレックス・ガーランド監督×A24のタッグによるアクション映画『ウォーフェア 戦地最前線』が全国公開されます。

常に情勢が不安定で、近年でも軍事的緊張が高まり、世界の注目を浴びている国の一つ、イラク。本作はこの国にて2006年に、作戦を監視していたアメリカの海軍特殊部隊SEALsの小隊が、突然の事態転換に窮地に追い込まれ、兵士たちが文字通り「生き残るための戦いに」巻き込まれる姿を描きます。

実際にこの作戦に参加した兵士たちの記憶に基づいて作り上げられたこの作品。社会的なメッセージ性もさることながら、斬新かつ衝撃の強い演出が印象的であり、一般的な「アクション映画」とは異なる新たな刺激が味わえる作品であるといえる1本です。

映画『ウォーフェア 戦地最前線』概要

作品情報

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イラク戦争経験者で実体験をもとに、戦闘の最前線のにおける兵士たちの極限状態をリアルに再現した物語。

アレックス・ガーランド監督が、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』にて軍事アドバイザーを務めたレイ・メンドーサを共同監督・共同脚本に迎え作品を作り上げました。

メンドーサ監督は米軍特殊部隊として従軍経験を持っており、この物語はその特殊部隊での体験をベースに、監督の同胞兵士たちへの聞き取りを合わせて実施、脚本が執筆されました。

主演は若手俳優のディファラオ・ウン=ア=タイ。ほかにも『デトロイト』『ミッドサマー』のウィル・ポールター、『グラディエーターII 英雄を呼ぶ声』『ファンタスティック4 ファースト・ステップ』のジョセフ・クイン、『SHOGUN 将軍』のコズモ・ジャービス、『メイ・ディセンバー ゆれる真実』のチャールズ・メルトンらが共演に名を連ねています。

あらすじ

2006年、イラクの危険地帯ラマディ。アメリカ軍特殊部隊の8人の小隊が、中のとある建物に潜入、アルカイダ幹部の監視および狙撃体制構築の任務に就いていました。

ところが事態は急変、想定よりも早く先入場所を察知した敵による先制攻撃により、突然市街地での全面衝突が発生してしまいます。

完全包囲され、退路を断たれ、重傷者まで続出する小隊。緊迫の中、現場はさらに混迷を極めていきます。そして負傷した仲間を連れ逃げまどう混乱状態の隊員たちに、銃弾はさらに容赦なく降り注ぎ……。

作品詳細

製作:2025年製作(アメリカ映画)

原題:Warfare

監督・脚本:アレックス・ガーランド、レイ・メンドーサ

出演:ディファラオ・ウン=ア=タイ、ウィル・ポールター、ジョセフ・クイン、コズモ・ジャーヴィス、チャールズ・メルトンほか

配給:ハピネットファントム・スタジオ

劇場公開日:1⽉16⽇(⾦)よりTOHOシネマズ⽇⽐⾕ほか全国公開

公式サイト:https://a24jp.com/films/warfare/

戦争を「説明しない」からこそ、見えてくるもの

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本作は2006年11月、イラク・ラマディで実際に行われたアメリカ海軍特殊部隊SEALsの作戦をベースにした作品。過去の出来事を描いた映画ではありますが、本作が向き合っているのは歴史の検証というよりも、「戦場にいる瞬間、人はどんな状態に置かれるのか」という感覚そのものです。

物語は戦地での短い休息や、仲間同士の軽い空気から始まります。

しかし作戦が動き出すと、映画は一気に緊張感に包まれていきます。ここで印象的なのは、いわゆる戦争映画にありがちな盛り上がりや、感情を強く揺さぶる演出がほとんど見られない点です。兵士たちは誰か一人が主役になることもなく、淡々と、しかし極度の集中状態で行動を続けます。

アレックス・ガーランド監督と、実際にこの作戦に参加したレイ・メンドーサ監督は、共同で制作した本作について「戦場の主観的な現実」を描くことを大切にしたと語っています。そのため、兵士たちの詳しい背景や内面が語られることはありません。観客は彼らと同じように、限られた情報の中で状況を見つめることになります。

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ちょっとした移動や確認作業にも、細心の注意が必要になる戦場。ほんのわずかな判断ミスが、取り返しのつかない事態を招くこともあります。そうした場面が続くことで「戦場では常に神経をすり減らし続けなければならない」という現実が、説明なしに伝わってきます。

本作が興味深いのは、こうしたリアルな描写が、明確なメッセージにまとめられない点です。レイ・メンドーサ監督はインタビューで、本作を反戦映画としても、戦争を肯定する映画としても作っていないと語っています。

重要なのは、戦争を評価することではなく、「そこにいた人間が、どう行動し、何を感じていたのか」を正確に残すことだという考え方です。映画の中で描かれる兵士たちは、崇高な理想を語るわけでも、無力な存在として描かれるわけでもありません。ただ命令に従い、時に迷いながら仲間を守り、生き延びようと必死に行動します。

その姿からは、「この作戦は正しかったのか」「そもそも必要だったのか」といった問いが、自然と浮かび上がってきます。

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近年も世界各地で紛争や戦争が続く中で本作が示すのは、そのニュースの裏側にある「現場の一断面」です。大きな大義や正義の言葉ではなく、極限状態に置かれた人間の選択と緊張が描かれていきます。

エンドロールでは、この物語のモデルとなった実在の兵士が、戦争とは異なる場面で登場します。その穏やかな表情は強い感動を押しつけるものではありませんが、観客にとっては一つの救いとして映るはずです。戦争は終わらない問いを残しますが、少なくとも「生きている今」がそこにあることを明確に示してくれます。

本作は決して気軽に楽しめるタイプの映画ではありませんが、それでも戦争を特別なものとしてではなく「現実に起きた出来事」として考える、そんなきっかけを与えてくれる一本であることは間違いありません。

重さの中にある静かな誠実さが、観終わった後も胸の内にじわじわと残る作品であるといえるでしょう。

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