映画『#彼女が死んだ』 高いエンタメ性と社会をえぐるような鋭い視点が魅力の韓国サスペンス

レビュー
(C)2024 NGENE FILM ALL RIGHTS RESERVED

人間の表裏にまつわる一つの奇妙な出来事から、現代社会の闇のような部分に迫る映画『#彼女が死んだ』が全国公開されます。

裏で人に言えない異常癖を抱えながら表向きは真面目な生活を送る一人の男性が、ある日突然出くわした奇妙な出来事で大きく人生を狂わされ、驚愕の真実にたどり着いていくこのミステリー。

いわゆる「韓国ノワール」と呼ばれるダークなスリラー感タップリ。エンタメ性の高さを持ちながらも、現代社会を鋭く見つめたシリアスな視点も感じられる、見応え十分のサスペンス劇であります。

映画『#彼女が死んだ』概要

作品情報

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裏の顔を持つ不動産仲介人の男が、有名インフルエンサーの死亡現場を目撃したことで妙な天下に巻き込まれるとともに、インフルエンサーの裏の知られざる本質を明らかにしていく上で驚愕の事実に遭遇していく姿を描いたサスペンススリラー。

主演にピョン・ヨハン、共演にシン・へソン、イエルらが名を連ねています。

あらすじ

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不動産公認仲介士として人々から信頼を浴びるク・ジョンテ。一方で彼は、顧客から預かった鍵で家に入り込み、他人の人生を盗み見るという性癖がありました。

そんな彼はある日、コンビニでソーセージを食べながらビーガンサラダの写真を投稿するSNSインフルエンサーのハン・ソラに興味を持ちます。

ある日、とあるきっかけで彼女の家に入ることに成功したジョンテは、彼女が無残にも血まみれでソファで死んでいる姿を発見してしまいます。

なんとかその場から逃げ出したジョンテでしたが、彼女の家に出入りしたことを知る何者かから脅迫を受けるはめに。彼はソラのSNSを通じて周辺の人物をあたり、彼女の裏にある秘密を知り愕然とします……。

作品詳細

製作:2024年製作(韓国映画)

原題:그녀가 죽었다(英題:Following)

監督:キム・セフィ

出演:ピョン・ヨハン、シン・ヘソン、イエル、ユン・ビョンヒ、パク・イェニ、シム・ダルギ、パク・ミョンフンほか

配給:クロックワークス

劇場公開日:2025年1月10日(金)より全国順次ロードショー

公式サイト:https://klockworx.com/movies/following/

ハラハラドキドキのエンタメ性と「生きづらさ」の本質に迫る社会性

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主人公ク・ジョンテが出くわす「死体と対面してしまう」というショッキングな出来事が、途中で全く思わぬ方向へ筋が変化してしまう……。

本作はいわゆるミステリー、それもエンタメ映画としては近年抜きん出た特質を持つ韓国作品らしい、かなり捻りの利いたミステリーであります。

たとえば近年、日本で大きな話題を呼んだコメディー『カメラを止めるな!』にも、ある意味同様の性質が見られましたが、いわゆる「答え合わせ」的な要素を途中で展開させて物語を作り、その変則的な展開で見る者をグッと引き付けるものであるといえるでしょう。

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ジョンテは表向きには品行方正ながら、裏ではちょっと異常ともいえる性癖をもった人物。裏の顔をしっかりと隠し「真面目な人間」として生きているわけですが、ある事件に巻き込まれることで他人の秘密をほじくり出すこととなり、そして驚くべき事実を知るという入れ子構造のようなイメージ構造を展開させていき、見る者を「混乱の快楽」へと誘っていくわけです。

一方で本作はアバター文化に対する危機感、希薄な人間関係における怖さ、そして危機感のようなものを感じさせます。

お互いに知るべきではないタブーが存在する中、知らない間に自分の裏の部分が暴かれ、狙われるという怖さ。ジョンテの異常な性癖はある意味、彼自身の驕りのようにも見えますが、その自分を信じる思いは脆くも崩れ「絶対的は力はない」という警告を描いているようでもあるわけです。

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ラストは一見ハッピーエンド的な方向に向かうと見せながら、最後にふっと現れる些細な言動によって、ジョンテの動向に後味の悪さを残します。

このエンディングは物語のテーマとしてなにか重くシリアスなものを残しており、エンタメ色の強いカラーを持ちながらも「現代社会に生きる中での、居心地の悪い部分」をうまく表現する本作の特色を示しているようでもあります。

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