映画『ランド・オブ・バッド』 超絶アクションの奥に埋め込まれた「戦争への疑問・批判」

レビュー
(C)2025 JTAC Productions LLC. All Rights Reserved.

アメリカの特殊部隊が、とある極秘任務で遭遇した最悪の事態で悪戦苦闘するさまを描いた映画『ランド・オブ・バッド』が全国公開されました。

密林での隠密戦闘行動に対し遠隔操作の無人攻撃機による戦闘などを加え、現代的な戦争のトレンド的な面を合わせて描いたこのアクション・ストーリー。迫力たっぷりのアクションが楽しめる一方で、その表面的な戦闘シーンと対称的な裏事情など、ディテールにこだわった描写で戦争の意味を改めて考えさせるような物語となっています。

またリアム・ヘムワース、ラッセル・クロウと、二大人気俳優が演じるメイン・キャラクターの個性的な人物描写も、大きな見どころとなっています。

映画『ランド・オブ・バッド』概要

作品情報

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とあるミッションを遂行する中で、現場に孤立した若手軍曹と、彼を無人戦闘機により遠方から支援するベテラン操縦官との交流を交えて描いたアクション活劇。

作品を手がけたのは『アンダーウォーター』のウィリアム・ユーバンク監督。アメリカ海軍全面協力の上で入念な取材に基づき現代の軍事作戦をリアルに描き出しました。

メインキャストとして無人戦闘機の操縦官をラッセル・クロウ、若手軍曹をリアム・ヘムズワースというタッグが作品を盛り上げます。またヘムズワースの実兄ルーク・ヘムズワースも本作に出演を果たしています。

あらすじ

イスラム過激派の温床となっているスールー海の緑豊かな島で、米軍は拉致されたCIAエージェントを救出するという極秘任務に乗り出し、特殊部隊デルタフォースに出動を要請します。一方、その精鋭ぞろいの部隊の中で、JTAC(統合末端攻撃統制官)のキニ―軍曹は航空支援の連絡役として同行を指示されます。

実戦経験がほとんどないまま任務に参加することになったキニ―を、「場違いな客人」的にからかう部隊の面々。ところが目的地に到着後、部隊はいきなり反政府ゲリラに遭遇し壊滅寸前に陥ってしまいます。

戦場で孤立したキニ―は、上空から支援する無人戦闘機MQ-9リーパーのベテラン操縦官を頼りに、決死の脱出に挑むことを余儀なくされますが……。

作品詳細

製作:2024年製作(アメリカ映画)

原題:Land of Bad

監督・共同脚本:ウィリアム・ユーバンク

出演:リアム・ヘムズワース、ラッセル・クロウ、ルーク・ヘムズワース、リッキー・ウィトル、マイロ・ビンティミリアほか

配給:AMGエンタテインメント

劇場公開日:2025年8月15日(金)より全国順次ロードショー

公式サイト:https://land-of-bad.jp/

エンタメ性の奥に描いた「現代の戦争」の姿

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突然場違いな戦場に送り込まれ、挙げ句に一人だけ生き残った主人公が壮絶なサバイバルを繰り広げる…戦場に一人取り残され脱出のために悪戦苦闘するという展開は、どこか1987年の映画『プレデター』のような空気感をふと思い出す人もいるかもしれません。

一方でドローンによる無人機からの攻撃、監視が主人公と並走する様子は現代の戦争、戦場の特徴的な一面でもあり、非常に興味深いもの。ラッセル・クロウが演じる無人戦闘機の操縦官が見せる「緊張の場面」と隣り合わせの「平凡な日常」。

この一見異質な振る舞いに生きるベテランと、生きるために必死の兵士が無線一つでつながり、綱渡りのように生きる道を探していくさまは非常にスリリングスリリングであると同時に、「現代の戦争」の中に見える違和感が猛烈に見るものをくぎ付けにしていきます。

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ここで言う「違和感」とは、一秒後の展開におびえながら生きるために奮闘する緊張感と、それを時にスーパーマーケットで買い物をする時間のある平凡な日常を過ごすものが並走し、戦地の兵士をサポートするというそのギャップ感を示しています。人間の生死を賭ける戦争の隣に、日常が垣間見られるという点には戦争の意味を改めて問うているようなメッセージ性すら見えてくるでしょう。

また、本作を手がけたウィリアム・ユーバンク監督はこれまで『シグナル』『地球、最後の男』と、それぞれ「一人の男性」を徹底的にクローズアップした映像を作り上げてきたところに特徴があり、その表現も非常に個性的。

本作でもクロウが演じる無人戦闘機の操縦官と、リアム・ヘムズワース演じるキニ―軍曹それぞれの孤独な立ち位置におけるそれぞれの表情を巧みに演出しています。

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時に激しい戦いの場にあるそれぞれの表情、心理表現などは、まさにユーバンク監督の独壇場ともいえる画作りがなされており、単なるアクションではない、濃密な見どころ満載のアクション・エンタテインメント作品として仕上げています。

特に兵器などによる爆発シーンは全景だけでなくさまざまなショットをうまく使い分けて映し出していることからも、まるで見ている人が現場にいるようなドキドキ感を味わえる作品になっています。

現代社会の「戦場」の実体を感じる不安感をおぼえるとともに、エンタメ性抜群の緊張感、高揚感をうまく表現したこの作品。

ちょうど戦争映画が多く発表されている現代のこの時期において同様に響いてくる本作でありますが、シーンの流れからは見る側からすれば視覚的にハラハラ、ドキドキさせるエンタメ要素が満載。物語への感情移入をおぼえながら、物語に入り込んでしまうような臨場感をおぼえる可能性もあるでしょう。

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