映画『ロストランズ 闇を狩る者』ミラ・ジョボビッチ×ポール・W・S・アンダーソンが描く「荒廃世界に立つ魔女」

レビュー
(C)2024 Constantin Film Produktion GmbH, Spark Productions AG

文明崩壊のディストピア世界で蔓延する欲望に翻弄される魔女たちの姿を描いたダークファンタジー『ロストランズ 闇を狩る者』が全国公開されます。

テレビドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の原作者ジョージ・R・R・マーティンによる短編小説を実写映画化した本作。

『モンスターハンター』『バイオハザード』シリーズの主演ミラ・ジョボビッチと監督ポール・W・S・アンダーソンが再タッグを組んでおり、ある意味確立されたともいえるこのタッグならではの超絶な世界観が本作でも実現されました。

映画『ロストランズ 闇を狩る者』概要

作品情報

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文明が崩壊した世界と魔女、そしてわずかに生き残った人類から隔絶された地の秘密をめぐって展開するダークファンタジーアクション。

『バイオハザード』シリーズや『モータルコンバット』『エイリアンVSプレデター』など圧倒的なスケール感を放つSF、ファンタジーで定評のあるポール・W・S・アンダーソンが作品を手がけました。

主演には『バイオハザード』シリーズでも主役を務めたミラ・ジョボビッチ。ほかにも『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのデイブ・バウティスタ、『エンパイア・オブ・ザ・ウルフ』のアーリー・ジョバー、『バイオハザード ザ・ファイナル』のフレイザー・ジェームズらの個性的実力派俳優が出そろいました。

あらすじ

文明崩壊後の世界。

宗教が生き残った人類を支配する世界で、報酬と引き換えに「どんな願いでも受け入れる」不死身の魔女グレイ・アリスは王妃メランジュの依頼を受け、とある酒場で案内人として雇ったハンターのボイスとともに、人間社会から隔絶され、魔物が支配している地「ロストランズ」へと向かいます。

アリスを異端として裁いた教会の総司教と冷酷な処刑人アッシュは、王妃の依頼を「謀反」ととらえ、王妃を追い込むべくアリスを猛追します。

追手が迫る中、彼女らはなんとか目的地地に辿り着きますが……。

作品詳細

製作:2025年製作(アメリカ映画)

原題:In the Lost Lands

原作:ジョージ・R・R・マーティン

原案・監督・共同脚本:ポール・W・S・アンダーソン

原案・共同脚本:コンスタンティン・ワーナー

出演:ミラ・ジョボビッチ、デイブ・バウティスタ、アーリー・ジョバー、アマラ・オケレケ、フレイザー・ジェームズほか

配給:ハピネットファントム・スタジオ

劇場公開日:2026年1月1日(木)より全国順次ロードショー

公式サイト:https://happinet-phantom.com/lostlands/

終末世界を表現するミラ・ジョボビッチ×ポール・WS・アンダーソンの現在地

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本作『ロストランズ 闇を狩る者』の舞台は、時代も場所も明示されません。しかしそれがかつて地上に存在した文明が崩壊した後の世界であることは、一目で理解できるでしょう。

荒廃した大地、瓦礫と化した建造物、生命感の乏しい空間。そこに広がる世界観は、原作者ジョージ・R・R・マーティンの代表作『ゲーム・オブ・スローン』シリーズが持つ、中世時代を彷彿する重厚なファンタジー像とは明確に異なります。

むしろ想起されるのは、ポール・WS・アンダーソンとミラ・ジョボビッチが長年築いてきた『バイオハザード』シリーズ最終章の終末的イメージです。これは主人公の魔女の名が「グレイ・アリス」であることからも、同様の想起をされる人が多いのではないでしょうか。

荒廃した世界を孤独に進む姿、身体を張ったアクション、そして説明を最小限に抑えた人物造形は『バイオハザード』の主人公アリスの人物像とどこか重なります。

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一方で本作では全編が「日の当たらない」くすんだカラートーンで全編を覆っているのが印象的。その中でグレイ・アリスの体に刻まれた不気味な入れ墨のような模様が、彼女をこの世界の「異物」として際立たせています。映像は常に彼女の身体を中心に構築され、存在そのものが画面を支配しているかのような印象を与えます。

また本作は、敢えてスタジオ撮影とVFXを前提とした映像設計を徹底しています。

アンダーソン監督は、グリーンバックで撮影された役者の動きと、後処理される背景やカメラワークとの整合性に強いこだわりを持つことで知られていますが、その美学は本作でも遺憾なく発揮されています。ジョボビッチ自身もその姿勢を認めており、二人の間に築かれた信頼関係が、広大なスケール感と統一感のある世界表現を可能にしています。

さらに、劇中でグレイ・アリスのパートナーとなるデイブ・バウティスタとの相性も良好です。現実ではあり得ないはずの状況や距離感を、過剰な誇張ではなく十分に納得させる現実感として提示する点に、本作ならではの映像的魅力があります。

作り物であることを隠さず、むしろ突き詰めることで生まれる説得力こそが、このタッグの真骨頂といえるものであります。

主人公の存在が映す人間の愚かさ

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物語の中心にあるのは、文明崩壊後に形成された宗教支配の国家です。生き延びた人々は利権をめぐって争い、その拠り所として宗教が利用されます。

異端者を迫害する一方で、都合の良い存在は巧みに利用する。その構図は、過去の歴史だけでなく、現代社会にも通じるものがあり、「時代は繰り返す」という感覚が、この世界全体に漂っています。

ミラ・ジョボビッチが演じる「魔女」グレイ・アリスは、出生の秘密や詳細な来歴をほとんど語られず、物語はいきなり彼女が迫害される場面から始まります。しかしそれで十分なのです。

彼女は個人としてのドラマを語る存在というより、人間社会のはかなさや愚かさを浮かび上がらせるための装置として機能しています。

グレイ・アリスは人の願いを断ることができません。しかし、その願いが必ずしも幸福につながるとは限らないことを、彼女自身が最もよく理解しています。力を持ちながらもそれを望まず、結果として苦しみを背負い続ける。その矛盾した立場こそが、彼女の存在を悲劇的かつ寓話的なものにしています。

本作は、宗教や権力、異端者迫害といった古くから繰り返されてきた社会構造を、ファンタジーの形で風刺した寓話でもあります。派手なアクションや荒廃した世界観の奥には、人間が何度でも同じ過ちを繰り返す姿への冷ややかな視線が潜んでいます。

そして派手なアクションや荒廃した世界観を楽しむこともできる一方で、その奥に「人間が同じ構造を何度でも繰り返してしまう」という感覚をそっと残します。

答えを提示するというよりも「観る側が物語を見届けたあとに、それぞれの中で何か引っかかるものを残す」、その余韻こそが、本作の静かな魅力の一つといえるでしょう。

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