映画『母とわたしの3日間』『ゴーストニューヨークの幻』を彷彿する人情劇

すでに「母の日」は過ぎてしまいましたが、皆さんはお母さんへの感謝の気持ちを伝えられましたでしょうか？

今回紹介する映画『母とわたしの3日間』は、まさにその「お母さん」と子供の関係をテーマに描いた物語であります。

死してなお子供を案じ、天国より「3日間の休暇」を得て地上に降りてきた母。わだかまりを持ったまま別れを迎えた母が見たものは、果たして……。

ある意味1990年の映画『ゴースト　ニューヨークの幻』を彷彿する、思いやりと優しさが深く感じられる、愛情たっぷりの物語であります。

映画『母とわたしの3日間』概要

「休暇」をもらって天国から降りてきた亡き母と、母が残したレシピで定食屋を営む娘が過ごす3日間を描いたファンタジーストーリー。

『僕の特別な兄弟』『祝祭（脚本担当）』のユク・サンヒョ監督が作品を手がけました。また脚本を担当したのは『7番房の奇跡」『ハナ　奇跡の46日間』『プロミス　氷上の女神たち』などのユ・ヨンア。

ベテラン俳優のキム・ヘスクとドラマ『海街チャチャチャ』『オーマイビーナス』などで人気のシン・ミナが、それぞれ情の厚い母娘役を務めます。

一人娘チンジュを置いて亡くなり3年、母ポクチャは天国より三日間の休暇を与えられ地上に降りてきます。

担当する新人ガイドの、休暇期間のルール案内も耳に入らないボクチャ。生前チンジュはアメリカの大学で教授を務めていると聞いて、そのことを母として誇らしく思っていましたが、家に戻って愕然、チンジュは教授を辞めて故郷に戻り、生前ボクチャが営んでいた定食屋を再開していました。

戸惑うボクチャをよそに、定食屋を営む中でチンジュは親友のミジンとともに母の残したレシピを再現していきます。その懐かしい味とともに、チンジュの中では母との思い出が沸々とよみがえっていくのでした。

製作：2023年製作（韓国映画）

原題：3일의 휴가（英題：Our Season）

監督：ユク・サンヒョ

出演：キム・ヘスク、シン・ミナ、カン・ギヨン、ファン・ボラ、パク・ミョンフン、チャ・ミギョンほか

配給：クロックワークス

劇場公開日：5月24日（金）より全国ロードショー

日本でもドラマ化された2002年の映画『ラスト・プレゼント』などの作品が発表されているという傾向からは、韓国での母子の描き方、その中でも特に母と娘という関係の描き方には特徴のようなものも感じられることでしょう。

これは2006年の映画『春が来れば』などで描かれる母と息子、という関係部分を比較してみると強く感じられるところでもあります。

この物語では、分かり合えないままに別れを迎えてしまった母と娘が、母の死後にお互い知り得なかったさまざまな事実にたどり着き、改めてお互いの想いを深めていくというもの。

そこには同性であるという点で見えてくるプライドのような感情もしかり、お互いの芯の部分を隠しているという関係は、近年の日本で顕著に見られるという「友達のような関係」の母娘という光景とは全く趣を異にしたものでもあります。

しかしその裏に見えてくるお互いへの想いの深さも非常に重要なポイント。お互いに知らなかった事実に直面するたびに胸を痛めるそれぞれの表情は、見ている側にもグッと気持ちをつかまれるようであり、自分の人に対する接し方、肉親への想いというものを改めて考えさせられることでしょう。

韓国の田舎街の美しい風景や食欲をそそる家庭料理の数々も見どころであり、親元を離れ都会でのせわしい生活に疲れを感じる人などには是非お勧めしたい作品。人同士のギスギスした関係に対しても、一つの違う視点を与えてくれるような物語であります。