映画『超時空英雄伝エイリアノイド』ヒーローはどこから生まれるのか――神話創出の葛藤

レビュー
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時空を超え、英雄たちの運命が交錯する光景を追った韓国発のSF大作映画『超時空英雄伝エイリアノイド』がPart 1、Part 2二部に分かれて全国公開されます。

宇宙大戦、韓国歴史アクション、タイムワープとアクション・エンターテイメントの「全部のせ」的スケール感を持つ本作。

韓国のコンテンツ制作・エンターテインメント大手企業であるCJ ENMが構想5年、撮影387日という月日を懸けて作り出した、要注目の最強クロノバース・ムービーであります。今回は、新たなヒーロー誕生の予感すらされる本作の真意に迫っていきます。

映画『超時空英雄伝エイリアノイド』概要

作品情報

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人間社会に密かに入り込んでいた異星人たちと地球人が、時空を超えて人類滅亡の危機に立ち向かう姿をを2部にわたって描いた韓国発のSFアドベンチャー大作。

『チョン・ウチ 時空道士』『10人の泥棒たち』のチェ・ドンフン監督が作品を手掛けました。


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出演は『梟 フクロウ』のリュ・ジュンヨル、『MASTER マスター』のキム・ウビン、『お嬢さん』のキム・テリが謎の女イアン、『Be With You いま、会いにゆきます』のソ・ジソブら。

あらすじ

太古より地球の人間社会に入り込み、人間の体を「檻」として囚人を封じ込めてきた外星人。

2022年、長年にわたり外星人の囚人を監視してきたアンドロイドのガードとサンダーは、一人の脱獄囚を追う中でその一派が、人類を滅亡させ地球を支配しようと企んでいることを知ります。

その一方で1391年の高麗末期に、莫大な懸賞金が懸けられた「神剣」を求めて奔走する若き道士ムルクは、同じく神剣を狙う謎の女イアンに出会います。その「神剣」には、外星人にまつわる大いなる秘密が隠されていたとも知らず。

そして今、630年の時空を超えて過去と現代が交錯するとき、「神剣」が放つ光とともに、人類存続を懸けた過酷な戦いが幕を開けるのでした。

作品詳細

超時空英雄伝エイリアノイド PART1:神剣激突

製作:2022年製作(韓国映画)

原題:외계+인 1부(英題:Alienoid)

監督・脚本:チェ・ドンフン

出演:リュ・ジュンヨル、キム・ウビン、キム・テリ、ソ・ジソブ、ヨム・ジョンア、チョ・ウジン、キム・ウィソン、イ・ハニ、シン・ジョングン、イ・シフン、チン・ソンギュ、キム・デミョンほか

配給:クロックワークス

劇場公開日:2⽉13⽇(⾦)より全国公開

公式サイト:https://klockworx.com/movies/alienoid1/

超時空英雄伝エイリアノイド PART2:終局決戦

製作:2024年製作(韓国映画)

原題:외계+인 2부(英題:Alienoid: The Return to the Future)

監督・脚本:チェ・ドンフン

出演:リュ・ジュンヨル、キム・ウビン、キム・テリ、ソ・ジソブ、ヨム・ジョンア、チョ・ウジン、キム・ウィソン、イ・ハニ、シン・ジョングン、イ・シフン、チン・ソンギュ、キム・デミョンほか

配給:クロックワークス

劇場公開日:2⽉27⽇(⾦)より全国公開

公式サイト:https://klockworx.com/movies/alienoid2/

「古典的ヒーロー神話」という選択

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実は本作、一見現代大作としては少し違和感を覚えるような、古典的なヒーロー物語の構造が感じられます。

「善悪は明確に分かれ、ヒーローは覚醒し、仲間と共闘し、最終決戦へと至る」。複雑化する倫理やアンチヒーロー的揺らぎが主流となった現在の潮流とは、あえて距離を取っているようにも見えます。

でもこの選択自体は、後退ではありません。ある意味韓国映画界において、なんらかの「神話」を立ち上げるような傾向も見られ、そのために、強度のある単純さをあえて目指している方向性も感じられるからです。

たとえばアメリカならマーベルやDC、日本なら『仮面ライダー』『ウルトラマン』を始めとしたヒーロー。では韓国ではどうか?今はまだ明確な形とはなっていませんが、それを創出する高い可能性は秘めていると見ることができるでしょう。

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問題はその古典的構造に対して、物語をどのように現代性を接続するかという点にあるわけですが、本作にはヒーロー的物語の中に、明らかに「いま」の感覚を織り込もうとする痕跡が見られます。

「時間軸の分断」「複数の主体の配置」「単線的英雄像の相対化」。それらは単純な「勧善懲悪」から距離を取ろうとする意志の表れでもあります。そしてここに、本作のジレンマがあります。

神話を成立させるためには構造の明快さが必要です。しかし現代性を取り込もうとすれば物語は複層化し、焦点は拡散します。

結果として本作は「古典的ヒーロー神話を志向」しながら、同時に「現代的複雑性を抱え込む」という二重の方向性を持つことになります。

その緊張は物語の推進力を生む瞬間もありますが、同時に中心軸を揺らす要因にもなっています。しかしそれは単なる未整理とは言い切れません。むしろ、時代的要請との格闘の痕跡として読むこともできるのです。

韓国映画の拡張という文脈

近年の韓国映画は、社会派ジャンルで国際的評価を確立した後、本格SFへと射程を広げています。

宇宙開発を真正面から描いた『THE MOON』(2024年公開)の登場は、その象徴的な出来事と言えるでしょう。

その流れの中で、本作は「ヒーロー神話」という領域を担っています。

ここで重要なのは、完成度の単純比較ではありません。自国発の「神話形式」を構築できるのかという問いそのものが、映画産業の次の段階を示しているからです。

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本作は完成された神話ではありません。しかし、神話をゼロから立ち上げようとする際に避けがたい構造的緊張を、そのまま可視化している作品です。

ここにあるのは成功か失敗かという単純な二分法ではありません。古典性と現代性を両立させようとする困難。それを回避せず、正面から引き受けようとした点こそが、本作を真に意味あるものにしています。

ありきたりと片づけることは簡単ですが、本作は、実際にはありきたりで済ませることができない野心を抱え込んでいます。そのジレンマこそが、本作の最も興味深い部分といえるものであります。

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