どうです、このトップ画像？大半の方は「ああ、痛そう…やめてやめて！」「怖ぇぇ…」と思わずビビってしまうことでしょう。この見るからにおっかない構図と似た画として、80年代ゾンビ映画ブームを巻き起こしたルチオ・フルチ監督の映画『サンゲリア』を思い出される方も少なくないのでは？
しかし本作はホラーというよりはサスペンス、韓国発の時代劇スリラーであります。
本作『梟ーフクロウー』は、李氏朝鮮時代（1392年～1897年）の第16代国王である仁祖とその実子である世子との対立、そしてその死にまつわるミステリーをベースとして描かれた物語。仁祖が登場する韓国時代劇は韓流ドラマなどでも多く作られており、韓国時代劇ではある意味外せない人物であるともいえます。
物語は一人の「天才鍼医」の視点で展開し、暗闇の中で進んでいくハラハラドキドキの展開には思わず誰もが見入ってしまい、韓国時代劇ファンでなくとも気持ちに響いてくるポイントはあちこちに見られることでしょう。
今回はこの作品を紹介します。
映画『梟ーフクロウー』とは
作品概要
17世紀・朝鮮王朝時代の記録物「仁祖実録」に記された“怪奇の死”にまつわるミステリーをモチーフとして、一人の「盲目の目撃者」が死の真相を暴く姿を追ったサスペンススリラー。
主人公ギョンスを演じたのは、『毒戦 BELIEVER』のリュ・ジュンヨル。さらに『コンフィデンシャル』シリーズのユ・ヘジンが共演。このタッグは『タクシー運転手 ～約束は海を越えて～』と『The Battle: Roar to Victory』に続いて三作目となります。
韓国国内では2023年・第59回大鐘賞映画祭で新人監督賞・脚本賞・編集賞、第44回青龍映画賞で新人監督賞・撮影照明賞・編集賞を受賞と、同年における映画作品としては最多受賞を記録しました。
あらすじ
盲目ながら確かな診察技術を持ち、高い評価を受けている天才鍼医ギョンス。やがて彼はその才能が認められ、病気の弟の身を案じお金を稼ぐために、宮廷に仕えることを決心します。
誰にも言えない秘密を抱えながらも懸命に働くギョンス。ところがある夜、様態の急変した王の実子である世子の診察に同行した際、その死の寸前に驚愕の真実と直面することに。
弟の身を案じつつも死の真相に迫る決意をした彼は、朝日が昇るまでという限られた時間に追われながら、その真実に迫るべく闇の中を奔走します……。
作品情報
製作：2022年製作（韓国映画）
原題：올빼미（英題：The Night Owl）
監督：アン・テジン
出演：リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン
配給：ショウゲート
劇場公開日：2月9日（金）より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー
「光」と「闇」の狭間に見える、現代にも通じるテーマ
リュ・ジュンヨル演じる主人公ギョンスの盲目であるという性質、そしてそれに加えて彼が持つ秘密（タイトルがヒント）が、テーマに対する大きなカギとなっているこの物語。映像の中で見られる「光」、「闇」がそのまま物語の重要な要素となっているといえるでしょう。
韓国のドラマはわりに富裕層と一般庶民の対立構造的な様式を用いた作品も多く作られていますが、この物語は王族と庶民という、その最たる様式ともいえるバックグラウンドとなっており、ギョンスの立場は、ある意味庶民の縮図的な役割を示しています。
王族内の闇に直面し悩む彼の姿からは、まるで見ているこちらが「困難に直面した時、どのように道を切り開いていくべきなのか？」と問われているような気にもなってくるでしょう。
またユ・へジン演じる仁祖にも注目であります。
この物語における仁祖は、裏で悪だくみを進める暴君である一方、権力におぼれるという哀れな人物像で描かれています。
ユはこれまでの出演作では、わりに滑稽ながら人情深い性格のキャラが多く、人気バラエティ「三食ごはん」では温厚な性格を披露してきました。
しかし本作の仁祖に見られる威圧的な性質は真逆のキャラクターという印象。にもかかわらず「悪に染まった」という仁祖のカラーを、その演技とたたずまいで見事に表現しており、ベテランらしい演技の巧さと味を見せています。
また主演のリュとのまったく正反対の性質がぶつかる構図は物語のテーマ、メッセージをさらに鮮明なものとしている重要なポイントであり、その見事なぶつかり合いは、文字通り目が離せない見どころであるといえるでしょう。
韓国時代劇というある意味マニアックなジャンルながら、どこか現代にも通ずる普遍的なメッセージも感じられ、サスペンスならではのハラハラドキドキ感も相まってどっぷりとその世界観にハマってしまうこと間違いなしの作品であります！
映画『梟ーフクロウー』公式サイト
書いた人
