映画『罪深き少年たち』円熟味を増したソル・ギョングが挑んだ韓国で実際に起きた冤罪事件を追う刑事の姿

レビュー
(C)2023 CJ ENM Co., Ltd., AURA PICTURES ALL RIGHTS RESERVED

韓国で実際に起こった冤罪事件をもとに作られた映画『罪深き少年たち』が日本公開となります。

かつては映画『シルミド』『力道山』など、激しい生きざまを前面に出した役柄を多く演じてきたベテラン、ソル・ギョングが主演のこの作品。

キャスト陣の熱いぶつかり合いも大きな見どころでありますが、実話がベースの作品だけにメッセージ性としても見逃せないポイントを多く含んだ作品でもあります。

今、世界的にもサスペンスが熱い韓国映画。その中においても人間同士の激しいぶつかり合い、生々しくも直接訴えかけてくるような感情表現など、役者陣の演技、存在感など含め魅力満載の物語であります。

わりに地味な内容ながら見るとつい引き込まれてしまう、大きく気持ちを動かされる作品といえるでしょう。

映画『罪深き少年たち』概要

作品情報

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韓国で1999年に実際に発生した「参礼(サムレ)ナラスーパー事件」の経緯をもとに、濡れ衣を着せられ人生を壊された少年たちの17年間を取り戻すべく、無罪を証明するため奮闘する刑事の姿を追います。


『折れた矢』『権力に告ぐ』などのチョン・ジヨン監督が作品を手がけました。主演は『ペパーミント・キャンディー』『殺人者の記憶法』『悪の偶像』『キングメーカー 大統領を作った男』など大作、話題作に名を連ねるベテラン俳優ソル・ギョング。

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あらすじ

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1999年、全羅北道(チョルラプクト)の参礼(サムレ)にあるウリスーパーマーケットで強盗殺人事件が発生、捜査の末警察は近所に住む3人の少年を容疑者として逮捕し、一時事件は終結します。

ところが翌年、敏腕刑事のファン・ジュンチョルのもとに事件の真犯人に関する情報が寄せられます。

「狂犬」の異名を持つ粘り強さで署内でも言い伝えられていたジョンチルは、当時の捜査内容や記録に不可解な点が多いことに気付きさらに調査を進めていきます。

そしてジンチョルは三人の逮捕者は冤罪の可能性があることを示唆しますが、署内の大きな力に屈し左遷されてしまいます。

そして歳月が流れ…

作品詳細

製作:2022年製作(韓国映画)

原題:소년들(英題:THE BOYS)

監督:チョン・ジヨン

出演:ソル・ギョング、ユ・ジュンサン、チン・ギョン、ホ・ソンテ、ヨム・ヘランほか

配給:クロックワークス

劇場公開日:6月7日(金)より全国ロードショー

公式サイト:https://klockworx-asia.com/boys/

韓国社会の今、そして明日を知る辛辣なメッセージ

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韓国のサスペンス映画、ドラマでは多く取り上げられている、社会的に力を持った人々の威圧的な暴走。その「大きな力」の中には司法、つまり検察や警察といった力関係も大きく関わっており、その取り上げ方もさまざまです。

本作ではその司法が持つ絶対性の裏にある「不完全さ」、闇のような部分を示すもの。実際にあった冤罪事件より警察、検察の暴挙にスポットを当てているわけです。

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冤罪を扱った作品としては「よくある筋の物語」と片付けられてしまいがちな、シンプルでわかりやすいものではありますが、この作品が事実をベースにされたこと、そしてこの作品のメッセージが今という時代にも伝えられるという点において、韓国という国の側面を改めて感じさせる作品であるといえるでしょう。

物語では弱者が大きな権力の歪んだ行動に真っ向勝負をかけ、正しいことを願う人々の思いは届けられるべきところに届けられたようにも見えます。

しかしラストで示される一文章は非常に複雑な気分を生み出し、事件の主要なポイントを改めて考えさせられるものとなっています。

最大の魅力は、実力派俳優同士の確かな演技力によるぶつかり合い

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本作の最大の魅力は、なんといってもベテラン、ソル・ギョングを中心とした俳優陣の絶妙な演技振りにあるといえます。

ソルが演じた主人公ファン・ジュンチョルという人物は、若い頃には「狂犬」という、まさにソルが他の刑事モノで演じた荒くれ刑事そのものの性格でありましたが、冤罪事件を機に定年を間近に控えた現在では、あちこちに弱さを見せる人物と変わってしまいました。

かつてソルが2002年の『公共の敵』で演じたモーレツ刑事振りと比較すると、ジュンチョルは人生のスパンが長い分「人間の厚み」のある人物。

ソルはこのハードルの高い人間性を確かな演技力でしっかりと演じ切っており、「正義」という認識だけで人が動くことの難しさ、そして信念を貫く勇気のようなものを描いています。

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一方で対照的なのが、ユ・ジュンサンが演じる冤罪の中心的人物である刑事の堂々とした悪人ぶり。彼の存在感はちょっと大仰な印象もありますが、ある意味本作のポイントを浮きだたせるためには適切な演技とも見え、物語の本質をしっかりと捉えているように感じられます。

このように「正義と悪」的な力関係、そして適度にまぶされている「正義を貫き通すことの難しさ」が程よいバランス感で描かれ、見る人に事の成り行きから目を離さずにはいられない物語を紡ぎ出しています。

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また本作で隠れた見どころを作っているのが、ジュンチョルのかつての部下役を演じたホ・ソンテ。

彼はドラマなどではわりにクールな表情を前面に出した悪役が多い印象ですが、本作ではジュンチョルを後ろでバックアップする役柄に徹しており、どちらかというとハチャメチャな性格をうまく演技し、彼のあまり見られない引き出しの多さを披露しています。

非常に場を盛り上げる雰囲気もあり、他の作品で彼のイメージを抱いている方は、そのギャップにまず驚くことでしょう。

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