2024年1月12日より3日間(1月12日は前夜祭)に亘り、広島・尾道で映画イベント『尾道映画祭2024』が行われました。
古くは小津安二郎の『東京物語』など、数々の名作を生んだロケ地であったことから「映画の街」としても知られる尾道。またこの地を愛し、移り住んだ文学者もあり、文化的にも非常に興味深い地であります。
近代では日本を代表する映画監督である故・大林宣彦氏の生まれ故郷で、大林監督が生前「尾道三部作」「新尾道三部作」をはじめとした地に由来のある作品を輩出したことで知られていますが、
『尾道映画祭』は、その尾道により2017年より開催。第七回となる今回は5年ぶりとなる通常開催を迎えました。
今回はコラムにて、この映画祭で特別招待された作品のうち、尾道につながりの深い作品を、イベントに招待されたゲストによるトークショーのレポートとともに紹介していきたいと思います。
第一回は2024年よりテレビ放映開始となったアニメ『ぽんのみち』です。作品は1月14日に第一回~第三回が上映(第三回はテレビ放送に先駆けて上映)され、上映後に主人公・十返舎なしこの友人・河東ぱい役の佐伯伊織さん、及び徳富泉役の若山詩音さんが登場しました。
アニメ『ぽんのみち』概要
『ぽんのみち』は広島県・尾道市にある元雀荘を遊び場として集う女子高生たちの日常を、尾道の風景とともに描いた作品。
作品では冒頭より尾道の駅を降り立った景観をはじめ、尾道に来たら「絶対に押さえておきたい観光地」的な場が、数多く舞台となる架空の元雀荘の周辺に映し出されます。
佐伯伊織、若山詩音トークショー
またトークでは作品についてお二人それぞれの印象もコメント。合わせてこの日上映された三話の印象などで盛り上がりつつ、登場人物たちが時を過ごす元雀荘の建物についても言及します。
佐伯さんは「(あんな秘密基地的なものは、自分の過去には)ありませんでしたが、いいですよね。元お店みたいなところがそんな場所になっているなんて」と、その楽しそうな光景を羨ましそうに眺めていたことを語ります。
またこの日は遠くは東京からもはるばる会場に来られた方もいる中、第三話に登場したチューブ型のジュースを「あなたは何と呼ぶ?」といった議論に発展。「チューチュー」「チューペット」「チュッチュボンボン」などといったところに根差した呼び方の議論で、会場に来られたお客さんとのトークでも盛り上がります。
一方、佐伯さんは自身が演じる「河東ぱい」というその麻雀テイスト満載のネーミングに「麻雀のために生まれてきたの?」と驚いたといい「フワフワしているけど、わりと当たりが強い」とその個性を分析。
一方で若山さんは、自身が担当する「徳富泉」を「声はボーイッシュだけど世話焼き。お母さんやお姉さんみたいな人かな」とその人物像をアピールします。
また尾道の印象について「ご飯がおいしいし、おいしいものがたくさんあるイメージ。また高い建物がなく街が見通せる景観がとても印象的!」と語る若山さん。もともとアニメの特別企画で訪れたことのある佐伯さんにも好印象の街に、二人は揃って「もう一度来たい!」「また来たい!」とコメントしました。
「麻雀」を楽しむ女の子たちの姿を通して見えてくる尾道の魅力
広島で麻雀というと、2017年に実写映画化された、麻雀をテーマとしたヒットコミック『咲-Saki-』に登場する、主人公たちと戦いを共にする登場人物の一人、染谷まこはなぜか広島弁バリバリの女の子だったなぁ、などと思い出したりします。
物語を見ていると、この地で「こんな風に麻雀を通して毎日の生活を楽しんでいる子がいるといいな」なんてふと考えたりします。
全自動雀卓による手打ちの麻雀は、近年「Mリーグ」なんてカテゴリも登場し盛り上がっていますが、そんな「マジ打ち」でないとなかなか入り込めない空気感が見えてくることもあります。
一方、本作で描かれるのは、あくまで女子高生の友達同士による「楽しみの現場」。時に熱中しながらも、「元雀荘だから」と別の時には料理なんかを作ってみんなで楽しく食べてみたり。
そして元雀荘の部屋内の光景と交差する、尾道の穏やかな風景。この作品でクローズアップされるのは、あくまで麻雀の「楽しさ」であり、この地の光景は何をしてもそんな「楽しさ」が生まれる、そんな気持ちを呼び起こしてくれるようでもあります。
まだ女子高生たちのユルい麻雀ライフが続きそうな物語序盤ではありますが、今後の展開が楽しみであるとともに、なんとなくこの尾道のような場所に「また来たい」「ここで何かを始めたい」とポジティブな気分になったこの日の上映会でありました!
アニメ『ぽんのみち』 作品情報
ある日、自分の部屋で騒ぎ過ぎた十返舎なしこは、母親に家からたたき出されてしまう。
自由に遊べる場所を失いふてくされるなしこは、父親から昔経営していた元雀荘を片付ける代わりに、そこを好きに使っていいという電話をもらう。
さっそく彼女は友達の河東ぱい、徳富 泉と集まれる遊び場を手に入れるべく元雀荘を片付け始める。すると店にあった麻雀牌から謎の精霊が現れて……!?
キャスト
十返舎なしこ:前田佳織里
河東ぱい:佐伯伊織
徳富 泉:若山詩音
林リーチェ:近藤唯
江見 跳:山村響
チョンボ:大塚明夫
スタッフ
原作:IIS-P
監督・脚本:南川達馬(『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』『波よ聞いてくれ』)
キャラクター原案:春場ねぎ(『戦隊大失格』『五等分の花嫁』)
キャラクターデザイン:大田謙治(『刀使ノ巫女』総作画監督『ランス・アンド・マスクス』キャラクターデザイン)
色彩設計:角野江美
美術監督:Scott MacDonald
撮影監督:天田 雅
編集:木村祥明
音響監督:高橋 剛
音響制作:ビットグルーヴプロモーション
音楽:髙橋祐子、曽木琢磨、hisakuni、大橋莉子、江口寛至、シャリ
音楽制作:SUPA LOVE
協力:雀魂 -じゃんたま-、大洋技研株式会社
アニメーション制作:OLM(『ポケットモンスター』シリーズ、『妖怪ウォッチ』他)
公式サイト