「途中停車なし」「逃げ場なし」という究極のソリッド・シチュエーションにおけるインド発の激アツ・バトル・アクション『KILL 超覚醒』が全国公開されます。
長距離寝台列車に乗り込んできた強盗団に立ち向かう特殊部隊の最強兵士の姿を追ったこの物語。迫力と臨場感を徹底的に追究した映像は、従来の「ボリウッド」作品でもあまり見られない衝撃度が満載。
本作は第48回トロント国際映画祭のミッドナイト・マッドネス部門でワールドプレミア上映、さらに2025年の国際インド映画アカデミー賞で5部門を受賞、『ジョン・ウィック』シリーズを手掛けたチャド・スタエルスキ監督のプロデュースによるハリウッドリメイクが決定しているなど、国内外で大きな注目を集めています。
映画『KILL 超覚醒』概要
作品情報

長距離寝台列車という閉塞空間で展開する、凶悪強盗団と特殊部隊員の男による死闘を追った、インド発のバイオレンス・アクション。
本作を手掛けたニキル・ナゲシュ・バート監督が、学生時代に長距離列車内で強盗に遭遇したという実体験をモチーフに描いたとされています。
また本作のアクション監督は、かつて『コンフィデンシャル/共助』『サスペクト 哀しき容疑者』のアクションを手掛けた韓国のオ・セヨン。
あらすじ
インド東部ジャールカンド州から首都ニューデリーへと向かう、約1200キロのルートを走る寝台列車。
この電車では大実業家の娘トゥリカが、家族とともにその旅の路についていました。
ところがある時間に、大勢の凶悪な武装強盗団が乗り込み、慈悲なき暴力で客から金品を奪っていきました。
さらに彼らは、列車にトゥリカたち大物実業家の面々が乗っていることを知り、彼女を人質にとってしまいます。
一方、列車にはインド特殊部隊に所属する兵士でトゥリカの恋人であるアムリトが、友人とともに列車に乗り合わせていました。
列車内の危機に果敢に立ち向かっていたアムリトたちでしたが、そこには予想だにしないハプニングが発生し……。
作品詳細
製作:2023年製作(韓国映画)
原題:Kill
監督・脚本:ニキル・ナゲシュ・バート
出演:ラクシャ、ターニャ・マニクタラ、ラガブ・ジュヤル、アシーシュ・ビディアルティほか
配給:松竹
劇場公開日:2025年11月14日(金)より全国順次ロードショー
公式サイト:https://movies.shochiku.co.jp/kill/
絶望の密室で繰り広げられる、血と汗の覚醒

本作はまさにインド版『ダイ・ハード』ともいえそうな、アクション・ストーリー。しかし「アクション」というエンタメ性から想像するレベルをはるかに超える濃密さ、壮絶性はかなり刺激的でもあります。
特筆すべきは主人公アムリトが何度も遭遇する容赦ない暴力と、それに対する彼の不屈の精神。観客は文字通り「やられても、やられても、なおも立ち上がる」その壮絶な主人公の姿に、終始目を奪われてしまうことでしょう。
本作のハイライトは、まさしく「電車の中の閉塞化空間で繰り広げられる死闘」シーンにあります。逃げ場のない密室という設定は、アクションの緊張感を極限まで高め、多彩なライティングの演出と相まって、まるでその現場にいるような極限状態の空気感を見る側に叩きつけてきます。

この空間的な緊迫感と、照明技術が作り出す視覚的な圧力は、「重く激しいアクション好き」の観客にはまさにおススメできるポイント。
また物語の序章の作り方も非常に効果的です。序盤は、ある意味よく知られる「ボリウッド作品」を思わせる、どこか華やかでロマンティックな世界が現れますが、その甘い空気は瞬く間に毒され、徐々に不穏な空気が流れ始めると、一気に観客を衝撃的な展開へと引きずり込みます。
そして「えっ、いきなり!?」という衝撃のハプニングから、一つのタイミングを迎えます。この「衝撃度」が極まった個所こそ、実はこの物語の始まりとなり、主人公の絶望的な戦いが幕を開けるのです。
絶望の密室で繰り広げられる、血と汗の覚醒

インド映画といえば、国内における巨大なエンタメ市場で世界的にも知られている作風、いわゆる「ボリウッド」という言葉で想起させられる「華やかさ」「歌と踊りのイメージ」が強いかもしれません。
しかし本作はそんな既成概念を打ち破る、激しく、そして凄惨なシーンも多く見られる、意外にショッキングな作品となっています。
この容赦ないバイオレンス描写は、現在「IT大国」ともいわれるインドが抱える、いまだに消えぬ社会の側面を映し出しているようでもあり、この国の複雑な事情を感じさせる、深く印象的な光景が見られます。

本作のテーマは、極論的に「物語中のヒーローはなぜつらい思いをしながらも戦うのか?」という点に集約されます。物語が始まってからは、とにかくヒーローが傷つきながらも立ち上がり、一人また一人と敵を血祭りにあげていくという、シンプルな構成です。
にもかかわらず、見るものはその一つ一つの動向に目が離せなくなります。この、激しいアクションの裏側にあるカタルシスと、観客を惹きつける「構成づくりの巧みさ」こそが、この作品の最大の魅力といえるでしょう。
また、ヒーローと対峙するヴィランズの作り方も非常にユニークです。彼らは一見どこか抜けたような性質を見せながらも、その奥底には冷酷無比なカラーをたたえた人物像が潜んでいます。
この二面性が、主人公のひたむきな苦闘と見事に対比をなし、本作のドラマ性とキャラクター性を高めることに成功しています。
アクションの激しさだけでなく、その根底にある「戦う理由」を深く問いかける力作。新たな「アクション」を求めるアクション・ムービー・ファンには強くおススメしたい一本であります。

