「二人が決めた答えを、あなたはどう思いますか?」人生のピリオドをまもなく迎えようとする人たちの生きざまを、時にユーモラスに、しかしシリアスに描いた韓国ヒューマンドラマ『最後のピクニック』が全国公開されました。
2024年公開時に韓国で5年ぶりに芸術・独立映画の歴代ヒット記録を更新し、10代から80代という全年齢層の心をつかんだといわれ、非常に大きな注目を集める本作。
メインキャストとして「韓国の国民的俳優」の名にふさわしいベテランであるナ・ムニ、キム・ヨンオク、パク・グニョンらが卓越した演技力を遺憾なく発揮。見応えある映像の中に現代社会が抱えるシリアスで重要なテーマをしっかりと埋め込んだ力作として作り上げられました。
映画『最後のピクニック』概要
作品情報

長年離れていた故郷に訪れた一人の女性が、親友たちと楽しい時を過ごす中で、それぞれの青春時代の思い出や、波乱万丈な人生を描いたドラマ。
作品を手がけたのは、『怪談晩餐』のキム・ヨンギュン。
主演は『怪しい彼女』のナ・ムニ。さらにNetflixドラマ『イカゲーム』のキム・ヨンオク、『チャンス商会 初恋を探して』のパク・クニョンらが出演、ベテランならではの演技で味わい深い物語を盛り上げています。
あらすじ
大都会ソウルで息子家族と暮らすウンシムは、ある日突然親友グムスンが自分のもとを訪れたことをきっかけに、海沿いの町・南海(ナメ)に60年ぶりに帰郷し、グムスンの家に身を寄せます。
そこではかつてウンシムに思いを寄せていたテホもとも偶然再会、和気あいあいとした日々の中で三人は昔を取り戻したような日々を過ごしていきます。
忘れていた記憶の中から、宝物のような過去に心を躍らせるウンシムでしたが、彼女が長年この地を離れていたのにはある理由がありました。
そしてその出来事とお互いの波乱万丈人生が明かされ、ウンシムとグムスンは、美しい花が満開の草原へ「最後のピクニック」に出かけていくのでした…。
作品詳細
製作:2024年製作(韓国映画)
原題:소풍 (英題:Picnic)
監督:キム・ヨンギュン
出演:ナ・ムニ、キム・ヨンオク、パク・グニョンほか
配給:ショウゲート
劇場公開日:2025年9月12日(金)より全国順次ロードショー
公式サイト:https://picnic-movie.jp/
「人生のピリオドに向けた道のり」を巧みに描いたベテラン俳優たち

物語の序盤は「元気のいいおばあちゃんたち」によるちょっと喜劇的な展開から始まる物語。2004年の『怪しい彼女』などをはじめ、韓国映画にはバイタリティーにあふれた老人が巻き起こすドタバタコメディーが数多く発表されています。
しかし全体としてこの物語は、その序盤のちょっと勢いのある雰囲気から打って変わって非常にシリアスなテーマを描いています。
不甲斐ない毎日を送る息子に厳しく、強い母親像を序盤に見せる主人公ウンシム。その彼女と堂々と渡り合うグムスン。そしてかつてウンシムに憧れ、再会してもその思いを明るい表情で見せるテホと、メインキャラクターたちは元気な様子を見せていきます。
しかし物語が進むにつれ、彼女らは徐々にその裏にある真実や弱い部分をあらわにしていきます。その序盤と展開のギャップは、人生における普遍的な厳しさを如実に表しているようでもあります。

そして物語はラストに、ある意味ショッキングな展開へと流れていきます。
美しき思い出によりつながり続ける三人は苦しい毎日を必死に生き続けた人生を経て再会し、自分たちの人生の意味を振り返っていくわけですが、このラストは見ている側に「あなたなら、自分の人生をどう終えるか」「あなたは人生をどんな思いで貫いて生きたいか」と痛烈なメッセージを突き付けてくるような衝撃をおぼえさせるもの。
いたたまれない気持ちになる人もいるかもしれませんが、物語が非常に重要なテーマであることを改めて考えさせてくれるものでもあります。
一方、物語ではその三人それぞれの人生に加え、お互いへの友情とともに、子どもたちが築いた家族のエピソードを巧みに絡み合わせていることも特徴となっています。三人と家族の関係は「世代間ギャップ」といった言葉で括ってしまうにはあまりにも複雑で、人同士のつながりが難しいものである一方で、それでもやはり大切なものであることを改めて示しています。

メインキャストのナ・ムニ、キム・ヨンオク、パク・グニョンはいずれも韓国俳優としては超ベテラン、国民的俳優と呼ばれる域にある役者陣。
パク・グニョンは「韓国の優しい祖父」として慕われている一方で、韓国ドラマではわりにヴィラン的威圧感を振りまいてきたことも多い役者ですが、この作品の演技からはその演技の幅広さを、これでもいわんばかりに見せつけられる印象もあります。
そしてこの物語の主な流れ、三人それぞれに一見主張の強い性格ながら奥底に弱さや迷いを見せるという深い人間性を、卓越した演技を発揮し存分に披露しています。
こんな風に年を重ね円熟味を増していくのは、俳優として本望ではないか。彼らの演技にはそんな風にも感じられる存在感があり、非常に見応えのある作品であるといえるでしょう。
ちなみに本作のオリジナル・サウンドトラックを手がけたのは、韓国POP界のトップアーティストであるイム・ヨンウン。
本作のクライマックスで流れる「Grain of Sand」のMVが、本国で3900万ビューを超えた(2025.6.30時点)ことも大きな話題を呼んでいます。

